2012年5月2日水曜日

どんな不出来な葬式にも



葬式を軽んじる人が増えているそうで
なるべく節約すべきだとか
火葬だけでいいとか
行けばかえって負担をかけるとか
身内だけで済ますべきだとか
いろいろと持論を展開する

人づきあいの拙い人が
人づきあいの華のような葬式を
必死に拒んでいるようにも聞こえる
つよい我が
かえって見透かされるような…

どんな考えがあってもいいし
どんな葬式でもいいとは思うけれど
人が死んだら駆けつける
かたちは整わなくても
とにかく
ばたばたとする
さびしむ
棺桶の等級はどうしよう
段飾りはどのくらいにしよう
精進落としの料理の量は…
などと迷いに迷うのが
やはり
ふさわしいのではないか

葬式などいらない―
そう言っていた人が死んだ時
火葬の窯の前で
入棺の時
また
まだ熱いお骨が
ざあっと引き出されてきた時
(葬式をしてよかった…
(他の人たちがいっしょにいてくれてよかった…
つくづく
そう思った

生き残って
いちばんつらい人を
生き延びられるようにしてやるのが
葬式ではないのか
ひとりきりで火葬の窯の前に向かわせない配慮が
どんな不出来な葬式にもある
どたばたや
ばたばたや
迷いや
面倒や
出費や
…そうしたものに救われる
ということがある



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