2012年5月10日木曜日

江の島



連休の江の島に
むかし
弟と
従妹と行って
鎌倉まで
つらつら
海岸を歩き

途中
浜に打ち上げられた
小さなサメを見つけた
ぼくらは
黙って見続け
弟はたしか
棒の先で突いたりした
棒を捨てずに
アメフラシなんかも
突っついていた

見つけるもの
ひとつひとつに
彼らは
集中し切って遊んでいた

いちばん年上のぼくは
危なくないよう
彼らに目を配り続け
浜にも
落ちているもののどれにも
五月の海にも
没入などできなかった

もう
むかしのこと
彼らはまだ元気だし
ぼくはもう
彼らに目を配り続けていない

江の島には
その後
他の人たちと何度も行ったが
何人かは死んでしまい
何人かは音信不通

この頃
行っていない
江の島
初夏
生しらすが旨いが
あれも
このところ食べていない

(やはり放射能に
(汚されてしまったろうか…

夕暮れになると
浜で
海風に髪をいたぶられながら
暗んでいく海のほうを
ずっと見つめていた

かたわらにいた
あの人たちなしで
ひとりで
あの海風に
いたぶられにいこうか
髪の
まだあるうちに



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