2012年8月10日金曜日

曇りガラスと紫陽花が薄闇の中で接している



曇りガラスの室内側に明かりはなく
暗い大きなやわらかい塊がガラス面に密着しているように見える
外側は滑らかだが
夜の闇の中では遠い星明かりを受ける夜川の表のよう

夏だというのにまだ咲いている紫陽花の
手鞠のような塊が五つ六つほど
夜の紫陽花の色は色の名残り
濃淡の差のひとつひとつの集積

街灯も遠く星も月も出ていないが
近所の家々やアパートからの明かりが届いて
紫陽花のかたちは灰色の上に別の色調の灰色で引いたような
それなりの鮮明さで浮き上がっている

立てられた垂直の硬い川のような曇りガラスに
紫陽花の花群が五つ六つ静かに接し
大きな葉群が土のほうを隠している
曇りガラスと紫陽花が薄闇の中で接している

まるで恐ろしいもののように静まっているが
熱帯夜に煮沸された意識の揺曳にとっては
どんな社会的光景も超えてもっとも頼りとすべき原景に見え
目も意識も薄闇に変わって融合していこうとする



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