2012年11月30日金曜日

これでいいのだというなら




 
だれもが
明日
死ぬかもしれないのに
鶏舎のなかの鶏のように落ち着かず
餌をついばむことだけ思って
せわしなく首を動かし
型にはまったぎこちない動きを続け
見開いているようでも
目は点
つくろっても毛はどこか汚れ
ひっきりなしに
糞尿をする

これでいいのだというなら
これでいいのだろう
ほかにやりようがあるかといえば
やりようもないのだろう

よろこび
価値
そんなメッキことばを
すっかり潰えさせてしまう
つめたい夕やみが来る時
腕には名前の書かれたラベルを巻かれ
カテーテルで痰を吸われ
舌には苔が生えて
OOさん、さあ食べましょうね
OOさん、さあおしっこですよ
保育園に入り直したように呼ばれ
衰えきった体の
乳児もどきができあがる

これでいいのだというなら
これでいいのだろう
ほかにやりようがあるかといえば
やりようもないのだろう

……
……
……


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