2013年8月26日月曜日

沼に戻らない選択肢



 

 
詩と呼ばれて

いるものを早朝の沼に

置き去りにして

村のほうへ

 
しかし

死に絶えた村

 
閉まって久しい

小屋のような郵便局も過ぎ

高低の背の

草の茂る空地を

いくつも過ぎ

 
このあたりに

A子が住んでいたが

―とよぎる

思いの湧く一角にも

なにか知れない

錆朽ちた大きな金属の塊が

草に埋もれている

 
煙草もなく

茶の小瓶もなく

メモ帳さえなくて

見まわしては

なにをするでもなしに

人生のように

重心をたえず変えながら

立っているばかり

 
せめては

記憶しておいて

Z男に伝えようかと思うが

あゝ彼も

そもそも架空の人物

 
また沼に戻る

戻るしかないが

昼前の沼にか

思いきって

夕暮れの沼にか

そんなことを思いはじめるうちに

沼に戻らない選択肢が

ゆっくりと血肉をとっていく










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