2016年10月9日日曜日

大和路行


晩秋から
初冬にかけて
しきりに奈良や明日香の奥地に
そぞろ歩きに出たくなる
そんな病も
どうやら癒えてきて
室生の人家の
庭先の木に生っているのでもない
柿の実を
上野の桜木町界隈で
眺めたりしている

秋から冬に
五回も六回も
明日香に出かけていた頃の
あの渇いた熱情
乾いた衝動は
なんだったのか

当麻寺の
中将姫の気味の悪いほど
生々しい
艶かしい肌の
像を見つめながら
あなたに誘われてきたのかしら
見えない因果に
惹きよせられながら…
などと
ひとりで問い続けていた
あの頃は
あれはなんだったのか

豪華さの
微塵もない小さなホテルや
民宿や
トラック運転手たちの泊る宿場を
転々としながらの
大和路行は
あれはいったい
なにに憑かれての
ものだったのか



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