朝の10時ごろ
しゃがんで
床の石板の一枚一枚
ぎゅっ、ぎゅっ
雑巾で
拭き洗いしている
水色の
制服のおばさん
永田町
東京メトロ
半蔵門線ホーム
一号車付近
薄いからだ
メガネの
制服おばさん
掃除っぷりに感心し
しばらく
ぼくは見続けてしまった
こんなふうに
どこの駅のホームでも
一枚一枚
床の石板は
拭かれ
磨かれて
掃除されてきたのか?
メトロの
駅という駅を
いっぺんに思い
ぼうぜんとなりながら
ホームの
あちこちに目をやり
むこうまで
見やり
ぼうぜんと
なりつづけた
一枚一枚
ぎゅっ、ぎゅっ
床の石板を
ずっと
だれかが
拭き続けていくのか
いつか
駅が壊され
石板の一枚一枚が
瓦礫になって
どこかに
山をつくるまで