とはいっても自分から
出てくる言葉とのつきあいだけが神事
燃え残った建物も捨てて
黒く煤けた内部の
ふいの唖然とする美しさに
水の揺れを通して
見下ろす街の夜景を
…しかし涙はとうに涸れていて
風のない
ほとんどない
秋の午後
夕方前
それでも
さわさわと
枯れ出した草は鳴るのです
(おしゃべりを
(する人たちは
(さびしいね
(さびしいね
心が遠いのか…
意識が遠いのか…
遠さが近いのか…
いくらでもできる
その気になれば
固有名詞や
普通名詞を
引き込むことなんて
少し遠くを見わたせば
詩人たちの
立ち枯れの
泥っぽい鈍色の柱
乱立というのでなく
存外きれいに並んで卒塔婆のようでもあり
ああして
みんな
みんな
枯れていくのね
外へ押し出されるわけでもなくて
中心というものは
ただ絶えまなく移り
かつての中心を
ひたすら嫌って
いつも
いつも
つぎの近江京
いつまでも
つぎの近江京
あの枯れ木にも
むかし心があって
そんな不確かな動きのそぶりがあって
言葉を吐いた
言葉を吸った
死んでも
枯れても
破られても
言葉だけが
生き残っていくのかしら
…かしら、ね
秋はひたすらに滅びの温度
生きている人の
死んでいる様がよく見え
ぼうぼうと燃える
未来の死体がひとつひとつ
見え過ぎる
まだ来ない時なのに
見え過ぎる
先行予約死体がお茶して
ショッピングして
集まって騒いで
さびしい
楽しさはさびしい
お洒落はさびしい
一家団欒さびしい
和気藹藹さびしい
家内安全さびしい
愛欲交合さびしい
臨海友邦さびしい
無限繁栄さびしい
人類平和さびしい
無限発展さびしい
焼肉定食さびしい
四字熟語さびしい
肋骨のなかに
ふと疲れを覚え
むしろ
そこに住む
からだに住んでいると
あなたも
思っているの?
からだのどこにお住まい?
今度
寄らせていただきます
こつこつ
ノックすればいいのかしら?
ふにゃふにゃ
押せばいいのかしら?
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