2013年11月24日日曜日

忘れられた幽谷のしずけさを聞き






敗戦後の私は日本古来の悲しみのなかに帰ってゆくばかりである。
私は戦後の世相なるもの、風俗なるものを信じない。現実なるものも信じない。
近代小説の根底の写実からも私は離れてしまいそうである。
もとからそうであったろう。
   川端康成




悪法がまたできるらしいが
抵抗に秀でたひとたちに任せておこう
ぼくはアタマ数のひとりにさえならずに
この冬からまた次の春
そのあとの夏への
ひかりと闇の交錯のさまを
生きつづけていこう
抵抗者たちのかわりに
忘れられた幽谷のしずけさを聞き
音もなく移る霧のいのちを
精霊たちとともに眺めつづけていよう                         
   





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