しかし甘やかされている現代人の柔弱な耳を、 さらに撫でてやる必要があるだろうか?わたしたちの側から、 彼らの偽善の言葉のために、 一歩でも寄り添ってやる必要があるだろうか?
ニーチェ『道徳の系譜学』(中山元訳)
よく生きることとは
たぶん
よく眠ること
適切に食べ
ちょうどよい加減の運動を続けること
これらによって心身の調子を保ち
なにかに集中できる時間を
毎日しっかりと確保すること
こんなことを御大層に記しておくのも
ニーチェの『道徳の系譜学』を読み直しているから
よき心とよき思考
そして健全な身体への反省を
ニーチェは突きつけてやまないが
わかったふりを捨て去って読み直すたび
そう難しくもない彼の論旨は
いつも頭頂を吹き飛ばすように爽快に効いてくる
すくなくとも女々しい小市民ぶりや
文弱ぶりを脱ぎ去るのには
特効薬のように作用する
最高の生き方とはなんだろうと
ニーチェの刺激を受け直しながら思ううち
この頃『異邦人』のムルソーの生き方こそが
そのロマネスクな実現だったのではないかと思い到ってきた
現代の不条理だとか
現代人の不幸だとか
無感覚な現代人の本質の摘出だとか
そんなことをカミュは描こうとしたのではなく
時代を超えた幸福な生のあり方を
最高の生き方を
描き出そうとしたに過ぎなかったのではないか
世間も習俗も法も時には平然と超えて
恨みからでもなく生活の必要からでもなく
太陽のまぶしさのゆえに人を銃撃する
そんな生の幸福
ちまちまと今の平成の日本の世間や
習俗や法の枠内に収まって喜怒哀楽するような詩歌も
おしゃべりも
物語や小説も
やっぱりぼくにはつまらなくってしょうがないのだ
そんなことよりも古来かわらない生の条件を
シンプルに確かめ直すこと
よく生きることとは
たぶん
よく眠ること
適切に食べ
ちょうどよい加減の運動を続けること
これらによって心身の調子を保ち
なにかに集中できる時間を
毎日しっかりと確保すること…
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