ふいによみがえる小さな
光景のはじっこの
穴からひとつの時間に入り込むと
いつもの
あきれたようなまなざしで
ぼくを見つめる
まだ若いあの人の顔があり
大きかった居間の空間がひろがり
毎年毎年
ずいぶん選びに選んで買って
掛けた薔薇の写真のカレンダーが
いちばん大きな
壁の端に彩りを添えていて
その時間の中にはその時間が流れていて
しばし
ぼくは見つめる
その時間の中にいて
まだまだ
成長を続けているぼくを
本当はこちらに
すべての本質があると知りながら
小さな節穴に
なったかのように
あるいは
透明な
小虫にでも
なったかのように
これっぽっちの物語も
生の流れも
記憶の堆積もない
数学的な一点のように
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