2019年5月8日水曜日

じぶんの喜怒哀楽についてさえ



地方の人に多いようだが
なにかで短い意見を求められた際に
~なだけです
~しかありません
という表現で返しているのをたびたび聞く

~を願うだけです
~であってほしいと思うだけです
もう喜びしかありません
ほんとに絶望しかありません
……

いやな表現を聞いた
いつも思う

簡易な誇張表現のひとつにすぎないとは
わかっている
喜怒哀楽を強めて
言い表したい「だけ」なのはわかっている

しかし
「~なだけです」のはずはないだろう?
「~しかありません」のはずはないだろう?
喜びだけの瞬間などあるわけがない
悲しみや絶望だけの瞬間などあるわけがない
喜びという単語を発語するだけでも
喜びはふつう薄れ
ほかの感情や思考が喜びという単語の発語以後の意識を構成する
悲しみや絶望の際も同じく

それなのに
もう喜びしかありません
と言う
ただただ悲しいだけです
と言う

嘘もはなはだしいじゃないか
思う

テレビでの
一般人なるものからの意見・感想採集の尺に
じぶんから進んで合わせ
感情や思いをしっかり刈り込んで
言語表現市場でちゃんと売り物になるよう
一瞬にまとめあげるようなことを
なんで
そこまでするのか

じぶんの喜怒哀楽についてさえ
くっきりと確定してとらえられず
ましてや
それを他人にむかって言う時には
もごもごと曖昧な言い方しかできないような
喜怒哀楽の渦や濤のさなかにすっかり自由を奪われてしまうような
そんなあり方でいいのに
そんなあり方であり続けるべきなのに



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