2012年2月5日日曜日

葉脈の兆しを受けて



成長は哀しい
綴じ糸の緩くなってきた本を
開いては閉じ
はじめから読み出す気にもならぬまま
活けたばかりのチューリップの
ピンクの花弁のやや白い筋を
追わせるふたつの視線

見るから
哀しいのだろうか
海の鮮やかな
遠さよ
若き日は老いの
すべてに内含され
絶えぬ波音が
静寂の中にも激しく
生後間もない赤子の首の皺の
やわらかい深さの奥に
沈んでいく
幾許かの希望

時間でしかない蔓の
絡みあい
緑濃い葉々の
一様に向く空の高み
低みに
視線を逸らせば
変わる
見ることの海
指の腹でなぞる
本の古い紙のおもても
棄てないでいく
まだ伸びる
葉脈の
兆しを受けて

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