また
死体を見ている
寝ずの番だ
今夜も
これがおれの仕事
おれが側にいてやると
死体たち
安堵するのがわかる
だんだん冷えて
硬くなっていく
かれら
こちとら
温かい体のままで
すまんな…
おれはつぶやく
はじめは
不気味にも思ったが
すぐ慣れた
静かな
連中だからな
それに
凛として
高貴だ
かれらの鼻や
頬骨の
品位には見惚れる
そして
額から目もとの
なんと
純で
いたいけなこと
生まれて間もない頃は
母親が慈しんで
飽かず
眺めてやったろう
今夜は
かわりにおれが
朝まで
ゆっくり
見守ってやる
卑しいおれだが
この仕事
手は抜かぬ
数え切れないほど
見てくると
死体は
到達点とわかる
弔うまでの
わずかの時間
人間というのは
頂点に到る
見飽きるなど
とんでもない
死顔も
組んだ手も
足裏も
まあ
なんという
厳かさ
夜はまだ
始まったばかり
ちびちびやる
美酒もある
うまい茶もある
パンもある
蝋燭は
ゆらゆら揺れて
踊る壁
夜明けまで
朝まで
心は凝っていく
至上の時
おれだけの
おれだけの
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