がんばろうという気持ちがふいになくなって
老衰しているわけでもないのに
しばらくわたしを眠ってしまっていた
日はのぼり
日は沈み
空はプラネタリウムのスクリーン
ティーバッグのお茶を淹れに台所に来ると
冷蔵庫は猫のようにグルグル
できたお茶が熱く静まって
まわりの空気が綿入れのようにやさしい
長いながい
心のほの暗い廊下を行き来して
歩みながらお茶を飲もうかと立ち上がると
ときおり現われる
齢百二十歳はあろうかと見える老人がわきに立ち
言うことには
おまえはまだ生まれてさえいないからな…
体は台所の小さな空間にあるのに
このことばに心は廊下を離れ
遠い砂漠とそのむこうの海を経巡っていた
行けども行けども
砂漠
海
おおい、わたし
まだ眠っているのかい
遠いとおい砂漠から
おまえに
返しの便り
おまえからは
いつ
来るだろう
まったくのんびりしたおまえ
まだ生まれてさえ
いないからな
と
言いかける…
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