時計を見て何時か確かめたのではない
時間というものを見たのだ
眠っていた
浅いような深い
深すぎる
しかし長くない眠り
ふっと起きて気づいた
時間というものの外に出ていて
時間というものを見ていた
あること
ないこと
と一体なので
時間だけでなく
あることないことを見ていた
と言ってもいい
あることないことは時間で
時間はあることないこと
とも
透明なそうめんの
切れ目ない
ながいながい
無限の束の流れ
それが時間
たいへんな
速度
喩えようもない
急流
その外にいて見ていた
中に入っても
流されない
これが時間なのか
流れに直角に進める
容易に戻れる
しかし急流
外に出てみる
外で流れを見てみる
しかし
起きるまぎわ
透明なかなしみに
つよく襲われた
いまは流されないでいられる
しかし
いつかこの力は失せる
わかっているのだ
わかっているのだ
その時に力を
なおも保てるような布石を
この生では
し足りてこなかった
それは覚悟や
精神のようなものではない
たんに物質的なもの
たんに強情に居座ったり
たんにたくさんの子を持ったり
そんなことを
してこなかった
だから流されてしまう
ある日ふいに
抗しようもなく
わけも意味もなく
そうして
つよくかなしく目覚め
時間の中に戻った
しかし
時間の中にいるのなら
こここそ
流されている場所
流されているのではないか
いまこそ
とすれば
してこなかった
そんなことの意味とは?
物質的なもの
強情に居座ったり
たくさんの子を持ったり
それらはなにか
ああ、透明なかなしみ
つよく
つよく
これに襲われ続けて…
時間はかなしい
あることないことはかなしい
かなしさの中を
まだ
ゆくのか
時間から出ても
なおも
かなしさ
風に吹き消される炎?
吹き消されても
いくのか
かなしさを
すっかり
身体にするまで?
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