2013年6月8日土曜日

ときおりこんな語を



  

旅の比喩は
もういいだろう
列車の棚に
そのまま
置いてきても

名もわからぬ
たくさんの
若草を摘みに
出たまゝ
帰るのを忘れ
水辺に行き
町のへりを過ぎ
山の夜陰も
心細く抜けた

成長
などと
甘えた言葉は
使わない
刈り取られ
喰われるための
語だから
ひとり
刈り取られず
喰われないなら
成長はない

いちばん外に
ある意識は
人の世をどう
見るだろう
冗談さえ
発しないか
喜怒哀楽も
とうに剝れて

空の
はじまるところ
終わるところ
そのように
受けとる意識が
なおも
一所に定まらず
蠢き続けて
ときおり
こんな語を
連ねたりする

                           
   


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