2015年3月6日金曜日

世界が言葉を発したかのような詩



夢の中で読んだのはいい詩で
なにより政治を真っ向から扱い
社会のさまざまな問題に目配りしつつ
古来からの人間の課題を
季節のあれこれの自然の姿と
世の中の流行とに混ぜ込みながら
硬直しない言葉づかいで
しかし奇をてらってもいない言い方で
私的な叙述は行わないながら
まるで私的でもあるような感慨が
肉のしっかりついたフィクションとして
温かく展開されていた詩
詩は個から出ていなければならず
かといってお仕着せの全に帰順するような
社会機構の一歯車の称揚であってもいけない
ぼくとか私などと記す瞬間に
底なしの泥のように粘着質で深い
はっきりしたかたちさえ取らない抵抗が
なされていなければならない
そんなすべての条件が整っていて
夢の中で読んだのはいい詩
自分は社会で自然で時空そのものだという
基本の認識がはっきりしていて
まるで世界が言葉を発したかのような詩



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