2017年4月3日月曜日

もっとも死の瞬間にさえ反省などしないのだから不幸でさえないが



           はからざるに病を受けて、忽ちにこの世を去らんとする時にこそ、
始めて、過ぎぬる方の誤れる事は知らるなれ。
誤りといふは、他の事にあらず、速かにすべき事を緩くし、
緩くすべき事を急ぎて、過ぎにし事の悔しきなり。
その時悔ゆとも、かひあらんや。
        吉田兼好『徒然草』第四九段


もう他人の話など聞かないが
他人が記した言葉もその他人の望むようにはもう読まない
こう見てくれ
こう理解してくれと
他人が見せつけてくるその人らしさなども
もう真面目に捉えようとはしない

誰もがそれぞれの妄想の中にいるだけで
そのさびしさを忘れるために徒党を組んだりしているが
一歩その徒党の外に出てふり返ればさびし過ぎる小さな群れが
荒涼とした地の風の中に震えているばかり
指導者を気取る者はみな盲目で
自分の根拠なき妄想を未来図と信じ込んで他人を引き込むばかり

生きている間は人はいくらでも時間があると妄信してしまう
まだ幾らでもやりくりして複数の物事を動かせると信じ込む
そうしながら為すべきでないことに首を突っ込み続け
他人も引き込んでみたりすれば何事か正道を行くかのように妄信す
こうして皆あまりに無益に死の滝壺へと流されて行く
もっとも死の瞬間にさえ反省などしないのだから不幸でさえないが




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