2017年4月5日水曜日

若い頃に読了したサルトルの『嘔吐』が出てきた



本の整理をしていたら、
偶然、若い頃に読了したサルトルの『嘔吐』が出てきた
読了日まで記してある
もうこんな記入はしない
若かったんだな

ランボーやプルーストやベルクソンにも強かったサルトル学者の平井啓之先生に親しく接していた頃で、
学生時代に学徒動員された先生は、よくおっしゃっていた
「仏文をやっていたのが、軍隊ではちょっと幸いしたんだよ
「軍人は馬鹿だからね、
『お前は大学で何をやっていた?』と聞かれた時、
『はっ、仏文であります』って答える
『フツブン?漢字ではどう書くのか?』
『はっ、ホトケにブンであります』と言うと、
『ホトケのブンか。お経だな。軍人として、いい心がけだ』と誉められたりする
英文科の連中なんか、年中ビンタされっぱなしだったよ
眼鏡かけている奴なんか、
『眼鏡取れ!、歯を食いしばれ!』って怒鳴られて、
おもいっきりひっぱたかれるんだ
毎日、その繰り返し

先生の三高時代の親友、林尹夫は、
軍用機操縦士となってアメリカ空軍機に打ち落とされ、
その日記『わがいのち 月明に燃ゆ』(筑摩書房)は戦没学徒の遺作のうちでも有名な一冊となった
大東亜戦争を否定し、戦局の不条理を冷静に観察しつつ、
英語、フランス語、ドイツ語の文学や思想について原語で研鑚を積み続け、
ある日、偵察飛行に出て空に散ったこの人の日記には、
強く鼓舞されるところがあり、
ぼくの若い頃の愛読書のひとつだった

サルトリアンの平井啓之先生は、
いつまでもドゥルーズを認められず、
「あれのどこがいいんだい?わからないよ」とおっしゃっていたが、
だいぶ歳をとられてから、
ベルクソン研究からの繋がりでドゥルーズ開眼を果たし、
ベルクソン論の翻訳を出版された

そんな昔話はともあれ、
今年は数人の読書会で『嘔吐』原文の再読を開始したばかりなので、
字の大きめなガリマール社のブランシュ版が出てきたのは、
ちょっとありがたいんだな





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