2017年7月23日日曜日

それだけでよい



物をたくさん持ちたいという落とし穴には
もう
ハマらないで済むようになっている

おゝ、神よ
ありがとうございます

たくさんの物を
処分しなければいけない機会に
なんどか
恵まれたから

おゝ、神よ
ありがとうございます

ひとつひとつ
つぶさに
よく見てみれば
あれも役に立ちそう
これも貴重
それも珍しい
そういったものを
いくつもの部屋いっぱい分
処分しなければ
ならなくなったことが
あったから

おゝ、神よ
ありがとうございます

そんな経験の後では
物は時間にしか
見えなくなってしまった

おゝ、神よ
ありがとうございます

物は時間
奪われていく時間
物を作るのにも
時間はふんだんに要るが
物を手に取り
味わい
評価し
用いるのに費やす時間は
これもまた
とほうもない量

まだまだ使えるものも
だれかの手に渡れば
ずいぶん価値があるだろう物も
もう
残酷なまでに
捨て去るようになっている

おゝ、神よ
ありがとうございます

使えば
新たな時間を奪われるから
だれかに渡そうとすれば
また
厖大な時間が奪われるから
お金もかかるから
手に取っただれかも
時間を奪われていくから

地上で
最低限生き延びていくだけの
物がいくつか
あるだけで
いい
ほんとうに

おゝ、神よ
ありがとうございます

空のめぐり
水の流れ
風の絶えざる変化
天候の変化
四季のうつりかわり
それらを感じ続け
感じたことを
こころや体の底へ
すみずみへ
散らして
染み込ませて
見えなくさせていくだけで
人間はよい

おゝ、神よ
ありがとうございます

巨大な宇宙のめぐりと
生成と崩壊のくりかえしの中で
いずれ消え去る
太陽系や銀河系の中の
小さな不安定な星の
つかの間の環境のなかに
さらにつかの間
意識を持ったわたしには
それだけで
よい

おゝ、神よ
ありがとうございます



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