暑い日が続いて、ふと、
なにか大きなものがヒュッと終わるかのように、
涼しくなったある日のこと、
わたしはアスファルトに恋をした。
けれども、心臓のドキドキを直視したりはしないで、
あゝ、これが、
アスファルト愛、ってやつね、
と、ちゃんと冷静に対処。
S895星雲で流行っている、とかなんとか、
言われていたあれだな、
いつのまにか、銀河系の太陽系にまで、
感染がひろまってきたんだな…
そう思って、
これ、重病になる前に治さないといけないなぁ、
と、ちゃんと冷静に考えをめぐらした。
めぐらしたことは、
めぐらした、
んだ、
けど、
薬があるわけでもないし、
寝ていれば治るのかどうか、わからないし、
なにかの栄養が足りればいいのかどうか、
それもわからないしで、
ちゃんと冷静に対処しようにも、
そこで止まってしまった。
ま、地球での知などというものは、
こんな程度。
アスファルト愛は、さいわい、
ひどく、ぐんぐん昂進するわけでもなく、
けっこう穏やかに、ほわぁ~っと膨らんでいく感じで、
外に出るたび、どこのアスファルトを見ても、
ああああああああああああああああ…
と、見とれてしまう程度に止まってくれていて、
人目を気にしないといけない地上では、
どうにかこうにか、制御できる感じ。
じつは、アスファルトには、
ふたつとして同じ顔貌の部分はないと気づき、
なんと唯一無二なのォ!、おおおお!
などと、いつも心は高鳴り、
人がおらず、車も来ないところでは、
地面に腹ばいになって、
アスファルトに頬ずりを、よく、するようになった。
道路の真ん中に寝転がって、
大の字になっているのも大好きで、
世界中の大都市の、あの夜明け前の静かな時間、
だいたいの幹線道路では、もう、寝転び済み。
この程度の症状で済んでいるんだから、
たいしたこともない、と安心しているけれど、
ほんとうに、
これがいつか昂じてしまって、
あちこちのアスファルトを剥がして収集したくなってしまったら、
どうしようかなぁ、と
ほんのちょっと、
心配。
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