2018年6月17日日曜日

道の道というべきは真の道にあらず



茶器の展覧会に来て
しずしず
足を運びながら
見てまわる

人がいっぱいだが
しずかである
からにして

しずしず
足を運びながら
見てまわる

茶道には
誇れるぐらい
きれいさっぱり
なんの関心もないので
茶器の説明も
いい加減にしか見ない
せいぜい
いちいちの品の名を
瞥見する程度

茶室は好きであるが
亭主も
他の客人もおらず
茶も
釜も
煮える湯も
ないほうがよい

誰もいない
なにもない
畳だけの茶室に
しばらく座っていたりするのは
いいものである

紅葉の頃
そうしていたことがある
霙の午後
そうしていたことがある
炎暑の午前
そうしていたことがある
若葉の頃も
そうしていたことがある

それでいいではないか
と思う

異国の
埃と排気ガスの大通りを逸れて
空気のねっとりした路地で
コーヒー売りから一杯買って
小さな箱に腰を下して
汗の引くのを待ちながら
(コーヒーをだが)
飲んでいたこともある

展覧会のうすら闇の中で
そんなことを
思い出していた

人間到るところに茶室あり

になってはいけない

道の道というべきは真の道にあらず

徹底的な思想の分裂点があり
わたしは譲らない
無知な者たちはすぐに道にしたがる
わたしは老子と荘子の側に居続ける者なり

愚かな島国文化よ

道を捨てよ

できかける道も
すぐに
破壊し溶解せよ

われ
剣を投ぜんがために
来たれり
と言っていたおじさんも
いたな

ちょっと
言い過ぎだった
おじさん



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