茶器の展覧会に来て
しずしず
足を運びながら
見てまわる
人がいっぱいだが
しずかである
からにして
しずしず
足を運びながら
見てまわる
茶道には
誇れるぐらい
きれいさっぱり
なんの関心もないので
茶器の説明も
いい加減にしか見ない
せいぜい
いちいちの品の名を
瞥見する程度
茶室は好きであるが
亭主も
他の客人もおらず
茶も
釜も
煮える湯も
ないほうがよい
誰もいない
なにもない
畳だけの茶室に
しばらく座っていたりするのは
いいものである
紅葉の頃
そうしていたことがある
霙の午後
そうしていたことがある
炎暑の午前
そうしていたことがある
若葉の頃も
そうしていたことがある
それでいいではないか
と思う
異国の
埃と排気ガスの大通りを逸れて
空気のねっとりした路地で
コーヒー売りから一杯買って
小さな箱に腰を下して
汗の引くのを待ちながら
(コーヒーをだが)
(コーヒーをだが)
飲んでいたこともある
展覧会のうすら闇の中で
そんなことを
思い出していた
人間到るところに茶室あり
道
になってはいけない
道の道というべきは真の道にあらず
徹底的な思想の分裂点があり
わたしは譲らない
無知な者たちはすぐに道にしたがる
わたしは老子と荘子の側に居続ける者なり
愚かな島国文化よ
道を捨てよ
できかける道も
すぐに
破壊し溶解せよ
われ
剣を投ぜんがために
来たれり
と言っていたおじさんも
いたな
ちょっと
言い過ぎだった
おじさん
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