2014年3月31日月曜日

はじめから何もなかったかのように




台所で思い出す死者が
おなじように
死者を思い出す台所が
おなじように
思い出す死者の台所が
おなじように

生者も死者も死んでて
おなじように
思い出の中でみな生きてて
おなじように
思い出の成立時点で死んでて
おなじように

何人も過ぎていった
おなじように
だれもかも過ぎていった
おなじように
関わった日々とともに
おなじように
関わらなかった日々とともに
おなじように

思い出されるために
おなじように
思い出されなくなるまで
おなじように
思い出されなくなるために
おなじように
思い出しあわなくなるまで
  おなじように
思い出しあわなくなるために
  おなじように

出会いさえしなかったかのように
  おなじように
はじめから何もなかったかのように
  おなじように






あなたの た、わ、  た、   わ、




春に も 
桜 に  も
ま っ た く 興味 を  失 っ   て
か ら
プラスチック  の  
透 明 舟 で   宙 を
浮い て い く     ぼく

魅 惑
湧く 青   の
空 なんか 
で  な く

笑 顔
に  なる  直前の
口もと  の
お肉 な
ひ、 と、   よ、

し ばらく
憩う
あなた の
た、 わ、    た、
わ、





2014年3月30日日曜日

世間のほうを向かぬ思念を



世間のほうを向かぬ思念を
編もうとしても

ひとのいない坂道や
立ち枯れた
大きな向日葵を使って
進もうとしがちには
なるだろう

あたまのなかを

それが
世間でないなどと

まさか

甘い考えを持っては
いまいな

じぶん自身が
もっとも世間だと
思い到っていないなどと

まさか





2014年3月29日土曜日

なわばり争い



なわばり争いが好きなんだなと
思い知らされる
こちらにまで押しつけられる
なわばり争い

国のため
未来のため
われわれのため
というが

じつはどれも
ほんとうに味方だったことも
なくって





また向かい直すことに



見知らぬ田野を
速すぎるでもなしに
進む列車

田も畑も林も
まだまだ肌寒そうだが
もの皆が
いのちのはじまった頃を
思い出し直す春が
やわらかい衣を
いちめんに敷いている

行く先はわかっているが

そんな地点をこえて
こころは
もっと遠いところへ
それも
ずいぶんゆっくり
また向かい直すことに
決めたらしい





2014年3月28日金曜日

あいすきゃんでぃー



憩いの
戦場

たんぽぽが
ぬるっと光って
地べたを這いつくばり
まだ遠い
低気圧

古めかしい
アイスキャンディーを
舐め舐め
ひらがなで
呼び直してみる

あいす
きゃんでぃー





2014年3月27日木曜日

Facebookの使い方や拒否のしかたひとつでも



未整理のがらくた箱のように
facebookを使っている
撮った写真のうちの
素人なりにちょっとマシなのを保存したり
他人が出してくる素晴らしい写真や
おふざけが楽しいあれこれを保存したり
そんな用途にはとってもいい
健康によさそうな小ネタや
問題ばかりの世の中について
ちょっと引き出しになりそうなものを
スクラップしておくのにも

ただそれだけのことなのに
大仰にfacebookはダメだとか
危険だとか
登録していながらも
使うのを絶対に拒否する知人もいる

各人各様で
どうでもいいことなのだが
あんなものの使い方や拒否のしかたでも
自我をガキガキ出さずにおれない
人間というものの
あわれさ





放っておく



わたしは非表現と
反表現の層に書きものをし
たまたま現象界に洩れ落ちる
文字
その黒い線たちを
たぶん
悪戯心から
消さないで放っておく





ぼくが持ちたくないものを



ぼくが持ちたくもないものを
どうだ
いっぱい持っているだろう
なんて威張られても
感心もしないし
困りもしないし

そういったものを
ぼくが持っていないからって
哀れなやつだとか
わびしいとか
そう思われても
陰でなんやかや
言われても

…なんというべきだろう

ちょっと遠くから
こちらに吼える
繋がれた犬たちのよう
なんだか
騒がしいようだな
あのあたり
ほこりのように
吼え声がしている、と…

もわっと
遠くの一点に固まる
そんな
春のひとこまに
たゞ
なってしまうだけ





冷たい蕎麦が



冷たい蕎麦が
とぅるる
食道を落ちていく
気持ちいい
春に
またまた
なりにけるかも
なりにけるかも






2014年3月26日水曜日

しあわせごっこ

  

みんな
しあわせごっこをしているだけ

比べあって
こっちとむこうと
どっちがしあわせかと
ぶつぶつ
つぶつぶ
判定しつづけているだけ

さいごには
でもこっちがしあわせ
こっちこそ
真のしあわせ
などと〆たがって






2014年3月25日火曜日

遠い遠い大きなからだから



あんな中で
どうして生き残れたのか
そうしてまた
あんな安全なところで
どうしてひとりだけ
逝ってしまったか

からだだけが
わたしのいのちと思うかぎり
いつまでもほんとうのからだは
把握できない

ここに
このようにいるふしぎ
あそこに
あのようにはいない
ふしぎ

空も地もからだで
肉体の息の根を止めようとするものさえ
からだだと知るまで
わたしたちの学びは続く

伸び続けたすえの
枝の先の先
開いた花のめしべの先の
つやつやした
ネバネバ

わたしはそれに過ぎず
遠い遠い
ふかい大きなからだから
ほそく伸びてきたに過ぎないと
知るまで





2014年3月23日日曜日

処女!とまるでお祓いのように



紅葉が
チョコレートのジェラートに
すこし凍え
コバルトブルーに
なり切る夢

たえず
微細に震え続ける
細い糸が
目に触って

かすがす
かすがす

意味もよくわからないまゝ
発していると
赤紫の深い色の車が
ゆるりと走り来て
だれかを攫っていくとともに
だれかを降ろしていった
これも

背の
シャツの襞を
触っていたのは誰?
目に見えなくなったからといって
見えなくなった
わけでは
ないでしょ
暗い午後の船着場の倉庫に
行かなければいけない
行かなければいけない
けれども
雑草の疎らすぎるのは心ぼそいなぁ
もっと
あの人の肌に触れておくべきだったと
後悔
ではないが
心ぼそい
(太陽も
(長いこと上っていなくて
掌の
(しかたなく
ある個所を
すこし強く指の先で
爪先で
押してみては(たぶん、ふいの泉
(湧出などを
(願って
(いる

ただの思いつきから
古い感傷的な詩を気取るように
(ちょっと猥褻さも伴って
処女!
と言ってみる
処女!
処女!

ガーゼでできた大きなローブを着て
どこか恐ろしい人影が
しだいに近づいてきて《処女!》となるように
いや、ならないように
処女!
処女!
とまるでお祓いのように






とにかくクリームソーダが




孤独やさびしさはクリームソーダの色どりによく
ヤシの木から下りてきたポンスを
みじかい時間なら引きつけておけるだろう
やつが飽きてしまったら
それはそれ
またいつもの問題のぶりかえし
真夏の大都会の雑踏のなか
サングラスをちゃんとかけさせ
めんどうでないなら日傘もささせて
ジャンヌをやらせよう
しろっぽいワンピースを着せて
なにか人生に目的でもあるかのように
きびきびとしたはや足で
数十区画を廻らせればいいだろう
戻ってくる頃には
クリームソーダが溶けて温くなるように
わたしなど死んでしまっている
もちろん夜になれば生まれかわるから
はやまって葬儀など頼まないように
死体は放っておいてくれ
ラフマニノフの交響曲第2番の第3楽章でもかけて
夏の夕暮れを見守っていてほしいところだが
ただ風に鳴る鉄箸を響かせておいてくれるほうが
よほどいいかもしれない
とにかくクリームソーダが大事で
とにかくそういう時代なのさ
とにかく
とにかく





2014年3月22日土曜日

真水


なにかの間違いで
エネルギーのあり過ぎるように
見える人たち

人間のつながりということについて
まだ希望を
持ったりしているのらしい

以前なら
それを
茶を飲みながら眺めたが

いまは
真水を飲みながら
それを
眺めない





2014年3月20日木曜日

さあゲームの始まりです



パットン将軍は言っていた
「もし戦争がなくなったら
「われわれはどうやって生きていけばいいんだ

そう、もし戦争がなくなったら
軍人は職業を失う
食いぶちを失う
しかし
それ以上の意味がここにはある

わかるまい                                                                              
この世だけしかないと信じている人には

ほんとうに戦争だけのあの世があり
軍人100パーセントという魂がある
そういうところから
この世に来ている大勢の者たちもいる

だから
戦争をなくそうという思いも
スローガンも
あまりに深い深い理由から意味をなさない
戦争反対、だの
平和を守れ、だのは
情況と締めつけがまだまだ甘いうちの
戯言

ほんとうに始まれば
雄弁家さんたちはみごとぴったり口を閉ざす
戦争万歳の側にいつのまにか紛れ込む
できることといえば
なんとか目立たなくするだけ
あとは巻き込まれ
蹂躪され
殺し殺され
大事なものを失って
ぼろぼろ
死んでいくだけ

さあゲームのはじまりです

戦争反対と叫んでいるあなたが
どのあたりから
どのように
万歳を言い出すか

仕事や家や家財や家族を失いそうになったら
あなたはどこまで
主張を続けられるか

そんな見せ場が満載のゲーム
人類にはおなじみのいつものゲーム
大昔から先祖代々慣れ親しんできたゲーム

さあゲームのはじまりです