2014年3月3日月曜日

きみは博士号の発行される領域のオタク


 
アメリカから来て
日本の中世の和歌を研究している人に
ひょんなところで会い
わざと古典的仮名遣いで書かれた
その人の論文なんかも貰ったが

まあ優秀なもんだと
驚きはしたものの
どうだかなとも思った
こうなっちゃうっていうのは

いろいろな文学の話にひろげようとして
あの作家だの詩人だのの話を出したが
ヘミングウェイなんてただの臆病の異常者とか
谷崎なんてそもそも論外だし
ギンズバーグのなにがいいんですか?とか
川端とか三島って狭い趣味の世界だし
だいたい現代で短歌や詩を書くのも無意味
とか言うものだから

ぼくはマァ鴎外なんだけどね一番好きなのは
って言ったら
うーむ…と黙ってしまった
古典研究者にはやっぱり鴎外は効くよね

中世歌人の誰それの
人生と作品の詳細な関係をいま研究中だというので
もちろん
人生はある程度は知るべきだけど
それによって作品を詳細に限定解釈しようなんていう態度は
つまりはサント=ブーヴの方法論で
プルーストがとうの昔にひっくり返したんだし
だいたい構造主義批評が全否定したでしょ?
現代の無思慮な歴史主義的批評や研究の揺り戻しも必然だろうけれ
批評方法論上の詳細な反省が必要だから
簡単に人生と作品を結びつけるなんていうのは
まあ文学研究以前の凡庸さを処理できていないってことだよね
と言い続けたら
うーむ…とも言わなくなってしまった

しょせん
きみは博士号の発行される領域のオタクなんだよ
課程博士のね






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