宙を流れている水
水に
わたくしたちは妊娠する
無心を
ずっとしてきたので
宙を流れている水
水に
左から夏草 もう夏草 いちばん遠い星は見えないから
背がこわばって
透明の栞を挿むちょっとの空き時間
宙を流れている水
水に
お茶を冷ましておく わざと
秋まで
ひぐらしをもう取りに行かない子になるまで
宙を流れている水
水に
えもいわれぬ色の瞳で空を転写している子
手の甲はさざ波立つ老人で
宙を流れている水
水に
からだの一部なのか 全部なのか 時間 着水しそうで
しないで伸びるように進んでいく
鷺 《象徴なんか使わない、使わない…》 皺…
宙を流れている水
水に
…波紋 皺 離水したから… しないで
影を水面に滑らせて 新たな小波も立てずに
往く 往く 伸びるように 全部なのか
宙を流れている水
水に
空を転写している皺… いちばん遠い星は
見えないから お茶を冷ましておく 離水したから…
妊娠する 伸びるように 左から夏草
宙を流れている水
水に
右からも もう夏草 透明の栞を
もう取りに行かない子 着水しそうで しないで
無心 芽吹くもののうちの最後のもの…
宙を流れている水
水に
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