2014年6月28日土曜日

白い小さなあの廃墟を




長い短さを手繰り続け
海の近い溝に行きあたって
それでも涼しい風が
いくらか抜ける
道路標識の下

なんの鳥かが
上空から落としたのか
小さなカワハギが
のっぺり
ぺったり
埃を薄くかぶって
落ちている

夏が来るのだ
まだ来る

使いかけのノートを
バッグから取り出したものの
新しいページを開かずに
また閉じてしまう
書きつけてもいいことはあるが
書きつけるべきことはなく
ヒトデを取りに
海に出るほうが先だと思う

捨ててきた家の下駄箱の上に
ひとつ
乾いたヒトデを置いてきた
あれを海水につけて
戻してやりたいと思うが
それはまた
いつか
そのうち

しめっぽい
大言壮語を続けている
都会人たちのあいだを抜けて
からからに乾いた
白い小さなあの廃墟を
取りに戻る
きっと




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