うちでは
スズムシが
鳴き続けている
昼も
夜も
朝も
夕べも
ひとが近づいても
もちろん
離れていても
うちのなかの
いろいろな物音にも
振動にも
だいたいは慣れたのだろう
飼育ケースの蓋をあけても
平気で
鳴いていたりする
餌を替えるのに
近くに指を持って行っても
平気で
鳴いていたりする
一匹で鳴くよりも
群れて
いっしょになって鳴くほうことのほうが
多い
そういうものなのだろうか
競いあっているのか
合唱が好きなのか
寝室で眠る時も
戸は開け放っているので
スズムシの鳴き声は
たっぷりと
耳に
脳に
押し寄せてくる
ふしぎな音色で
宇宙的
と言ってみたくさえなる
チェンバロの音色や
パイプオルガンの音色と競い合えるほどの
この世ならぬ音
贅沢な
この豊かな音色は
いつまでも忘れないだろうと思う
死ぬ時にも
スズムシのこの合唱を
毎晩
毎日
じぶんは聴く幸運に恵まれたのだ
と思うと
それだけでも
恵まれた生だったと
きっと
思えるだろう
死んだ後も
生まれ変わった後も
この音色の記憶は
きっと
魂についてまわるだろう
きみは
しあわせだったんだね
と
見えない世界の
種族の
だれからも
きっと
言われることだろう
0 件のコメント:
コメントを投稿