にっぽんは
ほんとうに壊れてしまったな
と
こころ
すっかり
秋
さらに崩れていくはずの
ものの
あれこれ
消えていくであろう
ひとびとの
だれかれ
遠く
ちかく
見ているうち
偶然
ひさしぶりに聞いた
スピッツ
『空も飛べるはず』に
はんわり
ファワッ
と
救われるようだった
あの明るさと
素朴（っぽ）さと
ノリのよさで
こう
来るのだ
きみと出会った奇跡が
この胸に
あふれてる
きっと
いまは自由に
空も飛べるはず
夢を濡らした涙が
海原へ流れたら
ずっと
そばで笑っていてほしい*
「きみ」はきっと
もう死んでしまっていて
だから「自由に空も飛べるはず」なのだろうし
「ずっと そばで笑っていてほしい」と
願ったりできるのだろう
と思ってきた
けれど
いまになって思うのだ
この「きみ」は
この数十年のにっぽんのことだ
と
そう思い直して
聞くと
「きみと出会った奇蹟が
この胸に
あふれてる」
は
痛切
失われた
というより
あらかじめ失われていた
はじめから
森喜朗
ではなくて
蜃気楼
だったにっぽんが
たぶん
「きみ」だった
あかるく
お気楽で
やさしかった
にっぽん
『愛のことば』で歌われていたように
くだらない話でやすらげる
ぼくらは
その愚かさこそが
なによりも
宝もの**
そんな空気の
永遠に続くかと思われた
ながいながい
時間の流れだった
「きみ」について
こう
思い直し
聴き直すと
「きみ」を多用して歌を作る草野マサムネは
あれら
あかるく
お気楽で
やさしかった
にっぽん
への
挽歌ばかり
歌い続けてきたのだったか
と思われた
『チェリー』では
こう来る
きみを忘れない
まがりくねった道をいく
うまれたての太陽と
夢をわたる
黄色い砂
二度と戻れない
くすぐりあって転げた日
きっと
想像した以上にさわがしい未来が
ぼくを待ってる***
そうして
『楓』
やはり
「きみ」を失って
ひとり
「きみのこえを抱いて」
「ぼく」は
「どこまでとどくだろう」
と
言葉
していく
さよなら
きみのこえを抱いて 歩いていく
あゝ ぼくのままで どこまでとどくだろう
風が吹いて 飛ばされそうな
かるいタマシイで
ひととおなじようなしあわせを
信じていたのに
これから
傷ついたり
だれか
傷つけても
あゝ ぼくのままで どこまでとどくだろう
「きみ」を使うのは
もちろん
歌謡曲やポップスの常套だけれど
にっぽんでは
むかしから
なんでもかんでも
すべて
ポップス
国歌だって
ルララ
「きみがヨォ～」なんて
言ってる
初期の
いちばんの代表作の『ロビンソン』では
「きみ」ばかりか
「国」も使われていた
なんとも
象徴的というか
いまの
にっぽんじんの
精神状況と
「いまここ」から始まる
未来を
予言するようだったというか
よくも
まあ
歌ったものだ
ルララ
こんなふうに
まちぶせた 夢のほとり
驚いた きみのひとみ
そして ぼくら
いまここで 生まれかわるよ
だれもさわれない ふたりだけの国
終わらない歌 ばらまいて
大きなちからで 空に浮かべたら
ルララ
宇宙の風に乗る*****
スピッツが登場した頃から
にっぽんの詩は
それとなく
はっきり
あきらかに
棲息する場所を変えた
ポップスの場所へ移ったのだ
トルバドゥールや
トルヴェールの昔に
ごく自然に
流れは移っていったのだな
と思えた
後の世には
1990年代以降の最大の天才詩人は
スピッツの草野マサムネだったと言われるだろう
彼が愛する山之口貘の素朴さと
世の中と生活と
うじうじ
くさくさ
じぶんのかたちなんかついに持てない
たくさんのたくさんの
ひとたちの
皮膚の裏の裏の裏を見通す詩魂が
さわさわ
ルララ
彼を支えている
草野マサムネは『殺される側の論理』の本多勝一も好むというが
『愛のことば』のこんな歌詞は
そういうところから
ごく自然に
滲み出てくるのかもしれない
昔あった国の映画で 一度観たような道を行く
なまぬるい風に吹かれて
いま 煙のなかで
溶けあいながら さがし続ける
愛のことば
傷つくことも なめあうことも 包みこまれる
愛のことば**
*空も飛べるはず
https://www.youtube.com/watch?
**愛のことば
https://www.youtube.com/watch?
***チェリー
https://www.youtube.com/watch?
****楓
https://www.youtube.com/watch?
*****ロビンソン
https://www.youtube.com/watch?
0 件のコメント:
コメントを投稿