つかもうとしてもつかめない
切片の果て
巨大なオレンジがすでに大きく傾いて
真夏の蔭はふかい緑だ
だれひとりいない
水晶の館よ
おれは帰ってきた
希少な極彩色の羽毛の鳥の
さほど鮮やかでない色の
一本の羽だけ
コートの胸ポケットに入れて
かつて賑やかだった
園遊会の行なわれた庭にひとりの影を落して
いまや五つの太陽が
弱い弱いひかりを落してくる下に
しばらく立ってみると
おれはただ影だったとわかる
すぐわきの
果樹園に傾く
巨大なオレンジと
傾かないグラジオラスと
そうして
種類豊富なメロンのたわわな実り
アプリコットの
うんざりするような
明るさと丸みの
森と呼ぶべきなのか、これも?
だれひとりいない
館の
水晶に吸われていくままの
影
おれを持て余して
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