ローマで雨だった
という
映画があった
と
思いながら
東京の10月末の雨のなかを
歩く
でも
違っていた
思い出した
と
思った
映画のタイトルは
ロベルト・ロッセリーニ監督の
『ローマで夜だった』
で
リチャード・ブルックス監督の
『雨の朝巴里に死す』
と
ちょっと混合させてしまい
『ローマで雨だった』
などと
架空の映画タイトルを
思って
しまったらしい
『雨の朝巴里に死す』は
エリザベス・テイラーが出ていたのが
唯一の取り柄で
なんだか
あまり面白くなかった
フィッツジェラルドの『バビロン再訪』が
原作というのに
でも
The Last Time I Saw Paris
という原題はいい
最後にパリを見たのはいつだろう?
ぼくの場合
などと
ふり返ってみる
昨年でも
一昨年でも
ない
醜く
おぞましく
チープに
すべて画一的になった世界に
もう旅には出て行かない
と決めて
どのくらいに
なる
だろう?
ふり返ってみる
昨年でも
一昨年でも
ない
東京で雨だった
そう思い出す時も
来るのか
来ないのか
まだ来ない
未来をも
ふり返ってみる
ふりもしてみる
じつは
うつくしい
東京の雨
雨の
東京はうつくしい
24時間
東京に居続けないとわからない
うつくしさ
雨の東京を嫌がる人は
東京の人では
ないだろう
東京で雨だった
それだけで
幸福な
ことだったね
雨の降る時
雨の東京から
雨の東京のどこかへ
移動する
雨の東京から
離れない
離れることが
ない
雨の東京から
帰っていくところはない
帰っていく先も
東京
東京で雨だった
東京の雨がうつくしい
それだけで
幸福な
ことだったね
雨の東京がうつくしい
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