2024年10月13日日曜日

一攫千金人士たち

 

 

 

その「壊す人」にならうように、

村を創建した仲間たちみなが、

やはり「巨人化」していたのでした。

大江健三郎 『M/Tと森のフシギの物語』 

 

 

 

 

神がアートした

自然界のあらゆる現象を見続け

聞き続け

触れ続けて飽きないように

人間が作り出した表象のすべても

事件や事態のすべても

見続け

聞き続け

触れ続けて

わたしは飽きない

 

文字や図像や映像や立体美術や

かたちなき観念作品としての哲学書や

ナンセンス詩のたぐいまで

貪欲に享受し続ける

 

人類史上では

まだまだ新しい出現物である

SNS上の文字群や図像群

映像群なども

それぞれ日に数百は享受し続けている

表面のみをお上品ぶって見せようとした

安倍晋三時代型のブルジョワ超浅薄人たちが

下品なものや危険なものとして

必死に排除しようとした低俗風味のものも

(同じたぐいのことがフローベールの時代に起こっていた)

人間精神の現われの

逸すべからざる実例として

つねに収集怠りないよう努めている

 

だが

こうしてみていると

SNSYouTubeなどに作物を載せるひとびとが

他人にどれだけ多く見てもらうか

聞いてもらうか

話題にしてもらうか

こればかりに関心が向かっていて

お祭りで店を出す香具師とかわらない

小物商人に成り切っているのが多く見られる

この時点でつまり

彼らの出し物はダメなまがい物というのがわかるのだが

けっこうな労力をかけていそうなのに

人間活動の向かい方としては

残念なことだと思われてならない

 

SNSYouTubeなどに載せるのも

電子網が発達した現代では当然のことだろうが

本当に自分が作りたかったものを作って載せるのなら

たくさんの人が見に来ることや

聞きに来ることは

とりあえず論外のこととして扱うほかない

黙ってまっとうに見たり聞いたりしてくれないひとびとが

蚊や蠅のように集まってきたところで

望ましい享受には結びつきようもないのだから

「チャンネル登録をお願いします」などという言葉は

吐かれていいはずがない

世界中でごく数人しか見ていないYouTubeコンテンツのほう

よほど価値がありそうに見えてくる所以である

 

一瞬だけつかの間の奇術を披露するような騙くらかしでないかぎり

より多い閲覧数を狙ったり

たくさんのチャンネル登録者獲得を求めたりするのは

ものを作る行為や

ながく万人に役に立っていくようなものを伝達する行為には

禁忌でしかない

テレビがつまらなくなり

時代遅れになり

どんどん人心がそこから離れつつあると嘯きながら

新時代のメディアを気取るSNSYouTubeなども

はやくも視聴率を競うテレビ化の一途で

ものの伝達を目指す領域に集まっていく人間たちというのは

どの時代にあっても

低レベルの一攫千金人士たちでしかないのかと

やはり思わされる

 

 





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