さぞかし
あのひとは寂しがっているだろう
とか
苦しがっているだろう
とか
声をかけてやらないと
かわいそうかもしれない
とか
そんなことを思うのが
ひとを思いやることであるかのように
考えていた頃もあった
しかし
だれもがいつも至上の瞬間にある
と
わかっていないといけない
うら寒い部屋のなかで
ぼんやりしている他ないような時でも
うら寒さもあれば
気を散らさせない尊い空漠もあって
それらを経験する素晴らしさときたら言い表しようもない
これから斬首される者でさえ
刀の刃が首に入り込む感触との出会いが
唯一無二の至上の経験として
待っているだろう
それはさすがに
極端な場合だとしても
だれもがいつも
たくさんのかたちや色や温度や
自然物や元素にたっぷりと取り巻かれていて
このうえない瞬間にのみある
それを感得できずに
さびしいとか
むなしいとか
もし思ったりしているのならば
他人がどのようにしても
救いようはない
気づかせようはない
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