2025年4月2日水曜日

だれもがいつも至上の瞬間にある

 

 

 

さぞかし

あのひとは寂しがっているだろう

とか

苦しがっているだろう

とか

声をかけてやらないと

かわいそうかもしれない

とか

 

そんなことを思うのが

ひとを思いやることであるかのように

考えていた頃もあった

 

しかし

だれもがいつも至上の瞬間にある

わかっていないといけない

 

うら寒い部屋のなかで

ぼんやりしている他ないような時でも

うら寒さもあれば

気を散らさせない尊い空漠もあって

それらを経験する素晴らしさときたら言い表しようもない

 

これから斬首される者でさえ

刀の刃が首に入り込む感触との出会いが

唯一無二の至上の経験として

待っているだろう

 

それはさすがに

極端な場合だとしても

だれもがいつも

たくさんのかたちや色や温度や

自然物や元素にたっぷりと取り巻かれていて

このうえない瞬間にのみある

 

それを感得できずに

さびしいとか

むなしいとか

もし思ったりしているのならば

他人がどのようにしても

救いようはない

気づかせようはない





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