奢れる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ
『平家物語』
千鳥ヶ淵の桜の満開のなか
花見しに来た人びとも満開のなか
思えてならなかったのは
1945年の3月10日なんかに大空襲をせずに
桜で満開の東京を焼き尽くしたら
アメリカ軍もなかなか
風情がある
というものだったろうにねェ
ということだった
満開の桜で埋めつくされた隅田川沿いに
M47焼夷爆弾やM50焼夷弾やM69焼夷弾や
いまはクラスター爆弾と呼ばれるE46-500ポンド収束爆弾な
散る桜の花びらにも負けじと多量に
降り注いだのだとしたら
桜とともに散るのが大好きな日本人には
ちょいと粋な死の燃え上がりだったろうにねェ
と思えてならなかった
♪咲いた花なら
散るのは覚悟
と『同期の桜』にあるように
♪みごと散りましょ
国のため
とあるように
ところがアメリカ軍は
花を持たせじと
まだ桜が蕾の頃の3月10日に
焼き尽くしに来たのだった
隅田川沿いの桜木たちは
まだ蕾のまま
焼き尽くされていった
こんなことが思えてならなかった
今年の千鳥ヶ淵の
満開の
桜の風景と
ゆるゆると花見して進む
たくさんの人びとの姿
どちらもこれから
めらめらと
燃え上がるように思えてならなかった
めらめらと
にっぽんというものの
終わりを
80年ばかしの
たまたまの
平穏さの消え失せていく
時を
*『同期の桜』
https://www.youtube.com/watch?
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