2025年4月7日月曜日

めらめらと

 

 

 

 

奢れる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし

たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ

 『平家物語』

 

 

 

 

 

千鳥ヶ淵の桜の満開のなか

花見しに来た人びとも満開のなか

思えてならなかったのは

1945年の3月10日なんかに大空襲をせずに

桜で満開の東京を焼き尽くしたら

アメリカ軍もなかなか

風情がある

というものだったろうにねェ

ということだった

 

満開の桜で埋めつくされた隅田川沿いに

M47焼夷爆弾やM50焼夷弾やM69焼夷弾や

いまはクラスター爆弾と呼ばれるE46-500ポンド収束爆弾などが

散る桜の花びらにも負けじと多量に

降り注いだのだとしたら

桜とともに散るのが大好きな日本人には

ちょいと粋な死の燃え上がりだったろうにねェ

と思えてならなかった

 

  ♪咲いた花なら

散るのは覚悟

 

と『同期の桜』にあるように

 

  ♪みごと散りましょ

国のため

 

とあるように

 

ところがアメリカ軍は

花を持たせじと

まだ桜が蕾の頃の3月10日に

焼き尽くしに来たのだった

隅田川沿いの桜木たちは

まだ蕾のまま

焼き尽くされていった

 

こんなことが思えてならなかった

今年の千鳥ヶ淵の

満開の

桜の風景と

ゆるゆると花見して進む

たくさんの人びとの姿

 

どちらもこれから

めらめらと

燃え上がるように思えてならなかった

 

めらめらと

にっぽんというものの

終わりを

 

80年ばかしの

たまたまの

平穏さの消え失せていく

時を

 

 

 

 

*『同期の桜』

https://www.youtube.com/watch?v=sdUrucGfoH4&t=10s

 

 

 



0 件のコメント: