2011年5月22日日曜日

雨がすこし降ったので雨の後とともに時間のなかにいる





雨がすこし降ったので雨の後とともに時間のなかにいる
汗ばんでいる、すこし

必要もないのに歩きに出る
なんという草だろう、みどり鮮やかな美しい雑草の群れを見上げる
エノコログサもまだ若々しいみどり
風が吹くと揺れる
若々しい雑草はうつくしく揺れる
この草たちの明るいみどり
これが希望
これを超える希望はない 
希望
みどり

ああ若い女の子が腿を桃のように晒してぴちぴち行く
腿の肌も顔の肌も腕の肌もすべらり
若い希望のひかり
みどり

わたしはもっと老いてアスファルトの上
雨がすこし降った後のアスファルトの上
雨がすこし降った後のアスファルト
うつくしい
不思議な地球の岩石の一種に出会うようだ、よくよく見つめる
女の子はもっとわかくアスファルトの上
雨がすこし降った後のアスファルトの上
雨がすこし降った後のアスファルト
うつくしい
女の子
うつくしい

みどり鮮やかなうつくしい雑草の群れが陽に透ける
女の子も陽に透けて女の子になっているのだろう
わたしも陽に透けてわたしになっているのだろう
アスファルトも陽に透けてアスファルト
雨の後も陽に透けて雨の後

汗ばんでいる、すこし
雨がすこし降ったので雨の後とともに時間のなかにいる
時間とともに
雨がすこし降った後のなかにいる

ああ若い女の子
行く
腿を桃のように晒して
ぴちぴち
腿の肌も顔の肌も腕の肌も
すべらり
若い希望のひかり
みどり

行く
時間とともに
雨の後とともに
時間のなか
雨がすこし降ったので
行く

雨がすこし降った

雨の後とともに時間のなかにいる

うららか



うららか
ということばが好きなので
むすめが生まれたら
ふたり生まれたらだけど
うらら
ららか
と名づけようと思う

ひとりだったら
どちらにしよう
迷うかな
うららか
と名づけちゃう
かもしれない

生まれなかったら
うららか
ということばを
娘に見立てて
かわいがっていこう
春のあたたかい日
桜咲くベンチで
うららかと隣りあって
お花見もする
お弁当も使う
さっぱりしていて
それもいい
弁当はひとつで済むし

うらら
ららか
ふたりが
生まれたら
生まれたで
どちらが生きのびていくか
気になってしまう
介護ホームで
うららさ~ん
ららかさ~ん
と呼ばれるのまで
聞こえるようで

うららか
ひとりが生まれたら
生まれたで
八〇歳をこえた
わが娘の背が
見えてきてしまう
春のあたたかい日
桜咲くベンチで
父と隣りあってしたと
お花見もするか
お弁当も使うか
さっぱりしていて
それもいい
弁当はひとつで済むし
と思ってくれるか
たったひとりで

ああ娘よ
娘たちよ
春のあたたかい日
桜咲くベンチで
たったひとりで
お花見
お弁当
させるために
おまえを
この世に呼んだのではないと
父を
信じ続けてくれるか
うらら
ららか
うららか
この名のように
ただ
生きよと
願った父を
信じ続けてくれるか

仕事のあと



It's still the same old story,
A fight for love and glory,
A case of do or die,
            As Time Goes By
(Herman Hupfield, 1931)



国際的な殺し屋とは知られていない…

三日間の旅程で
ある国の地方都市を訪ね
雪の降り続く夜
しずかに仕事を済ましてきた
アリバイはいつも完全である必要がある
ふつうの東京暮らしから
一日も抜け出さなかったかのように
勤め先でのルーティーンワークは
しっかりこなしておく
やっていたかに見せておく
早朝出勤して
九時前に持病の発作を起こしたと見せ(持病は
つねに複数持っているのが必要だ
気まぐれな性格も浮気癖も
スケベ根性も野次馬根性も
多方面の趣味も
マッサージ好きも
飲酒好きも
ふいの厭人癖や閉じこもり癖も
もちろん読書好きも
詩作趣味も
数時間の失踪の隠れ蓑にはいい)
夜の七時半ごろ(九時や十時ではいけない)
白っちゃけた顔で髪をわずかに乱し
会社に戻ってくる
その間に仕事を済ませてきたこともある
なされねばならない仕事
殺さねばならない人々はいる
仕掛けておくべき殺しがある
時には数年後
数十年後に発現するような殺しもある

今回の仕事は容易だった
後輩のだれかに
練習用に譲っておくべきだったかもしれない
だが彼らだと
こまかな隠蔽作業の際
気を抜いてしまいかねない
今回はそこが大事だった
そこにこそ熟練が要る

帰途
やはり雪の降りつもる
別の都市の駅で
用もないのに下車し
台湾人に変相し
バスに乗って郊外に出て
下りずにまた駅に戻り
マレーシア人に変相し
別の路線バスに乗り
雪で真っ白の住宅街を歩き
ダウンタウンに下るところの小さなカフェで
ミルクティーを飲みながら
ロシア語で「あすは雪は止むかねえ?」
マスターに話しかけ
肩をすくめる彼に
今度はヘブライ語で「じつは
ひどくフラレちゃったばかりで」
やはり肩をすくめる彼に
下手な英語で「人生ってやつは
うまくいかない」
まったくだよ
と今度はうなずく彼

店を出て駅までタクシーに乗る
マレーシアから来たんだ
運転手に話しかける
あんた、マレーシアに来たことあるかと聞く
いや、ないね
そうか、いいとこだぜ。いつか来る機会があったら
オーサカにおいでよ。マレーシアの首都だ。
へえ、おたくの国の首都は
オーサカっていうのか。
覚えとくよ。
この稼業じゃ、
ま、なかなか行けないだろうけどな。
駅に着いて
インドネシア人に変相する
用もないのに
少し雪の中を歩いて
雑貨屋でメントスを買う
小包装のハーシーチョコも買う
釣りを貰いながら「こんな日には
チョコも必要だ」と言う
そうだな。
俺ならココアのほうがいいけどな。
と答えてくる
灰色の目の
さびしげな店員だ
じゃあな、いい晩を。

駅まで歩いて戻る
空港までの急行が二〇分後に来る
そのホームに行かず
郊外へむかう列車のホームに出る
毛糸帽をかぶった白髭の老人が
ベンチに座って新聞を開いている
そのわきに座る
老人はこちらをふり向かない
線路のほうを見る
雪で真っ白だと思う
息も白く出る
あいかわらず息が白く出る
息が白いな
ミルクのように白い
そういう寒さなんだと思う
老人の息も白い
老人の息もミルクのようだ

なあ、これを見ろや。
老人が急に話しかけてくる
これを。
パレスチナ攻撃の記事を示してくる
こりゃあひどい殺戮だ。
イスラエルはやりすぎだ。
こんなにやみくもに人を殺していいわけがない。
なのに、あんた、
誰もちゃんとは止めないんだ。
誰もほんとに動きはしない。
昔からおなじ話。
いまも昔もおなじ話。
誰がどう考えたって悪いことだ。
悪いことってのは
こういうことを言うんだ。
止めなきゃいけないのはこういうことだ。
だけど、あんた、
どうこう理屈をつけながら
誰もなんにもしない。
人類ってのはいつもこれだ。
この世ってのは。
誰にも救われずに殺されていく運命がある。
かわいそうだけど、
残念だけど、
どうすることもできない、っていう
便利な言葉もあるしな。
人殺しはいけない、
戦争はいけない、
でもどうにもできないんだよねェ、
そんなふうに言いながら
たくみに目をそらす
逸らしさえせず
ゴシップの話題に変える
俺だって動かないで、
こんなとこで新聞見てるだけだ。
だけど、
こんな徹底的な仕方で
殺されていっているんだ
この連中を
なんとか救おうと思うこと
それまで放棄するのは
いちばん罪深いことだと思うが、
どうだね、
なにもできないんだが、
救おうと思う、
なにもできなくても、
救おうと思う、
いけないと言う、
ああいうのはだめだと言う、
どうかね、
俺はこんな誰もいないホームで
新聞読んでるだけなんだがね、
どうかね。

老人よ
あなたの息はミルク
雪だってミルク
世界はいまミルク
そう言いたい気になったが
ばかげている
思い直す
いけないとも言わず
救おうとも思わず
なにもできないとも思わず
じぶんは殺しているよ
着々と殺している
そう言いたい気になったが
ばかげている
思い直す

老人の息はミルク
老人は続ける
くりかえす
こういうのは
いけない。
こんな人殺しはいけない。
いけないと
思わなくなったらいけない。
ひとりひとりの心の中で
思わなくなったらいけない。
しょうがない
なんにもできない
あっさり言い放つようになったら
いけない。
いけないと思い続ける。
いけないという思いを守る。
やめさせねばならないと思う。
救わなければいけないと思う。
救えなくても。
救うと思う。

時間だ
空港への列車が来る
むこうのホームへ行かねば
まったく
あんたは正しい
あんたが正しい
そう言って
立つ
老人の目を見ながら
右手をあげて
かるく
farewell

思い続ける
老人
いけない
やめさせねば
救わねば
誰もいない
雪の夜のホーム
いけないと
思わなくなったらいけない
いけない
やめさせねば
救わねば

ミルクのような夜だ
誰もいない
雪の夜のホーム

Farewell

The International Middle East Media Center(IMEMC)のサイトで2008年12月からのガザ攻撃のニュースを見続けている


十日ほどのあいだに
こんなにたくさん
子どもの死体の写真を
見たことはない
イスラエル
きみがやったことだ
誇らしいかい
イスラエル
喜んでいるかな
きみの
子どもたちも

感謝すべきなのかな
ぼくの子どもが
たくさんの写真の中に
含まれていなかったことを
言うべきなのかな
ありがとうと
子どもさえ
平然と殺して
民族や国は
生きのびていくべしと
思い出させてくれたことを

青から遠ざかって



生きるとはどういうことだろう
あそこには
わずかの食べものにも
ありつけない人たち
むこうには
手足ばかりか
脳も吹き飛ばされる人たち
そんな地球の今を
楽しむとか
味わうとか
深めるとか
がんばるとか
そういうことがいったい
どういうことなのか
わからない

よろこびを
ひとり占めするために
来た地球だったのか
他人を見聞きしないために
持った目や
耳だったのか
空は大きく
まっ青にもなるというのに
いったい
どこまで人間は
小さく
小さく
青から遠ざかって
いけば
済むのか

からたちの花



なぜ銃で兵士が人を撃つのかと子が問う何が起こるのか見よ
(中川佐和子『海に向く椅子』)



日本の報道自由度は世界で五十一位だという
こんなにニュースや情報で溢れかえっているようなのに


ニュースをみるのは
カッタルイ
どんな情報も
ツカレル
年金特別便とやらの説明を読むのも気が進まず
ちいさな饅頭をつまみ
お茶を淹れてソファに座ってから
どれどれ
と読みはじめたぐらい
あたまに入ってこなくて
まいった
ようするに
どうしたいってのか
どうしてほしいってのか
あんな不祥事をひき起こして
菓子折りのひとつやふたつ
当然だろうと思っているあたまには
最初からパラダイムがちがう
奇妙な説明書き
回答して書類を返送するなんて
めんどくさくってできねえや
急いでも数分はかかる
二度と戻ってこない数分
悪かったのは
どっちだってんだ
悪いことしたら
どうするんだってんだよ
いらいら
いらいら
饅頭をふたつも食べちゃったじゃないの
業務上背信みたいなこと
勝手にやらかしやがったくせに
言いたかないんだけど
罵詈くんや
雑言くんが
舌にのぼってくる気配


ツカレル情報といえば
それそれ
また来る確定申告
もうじき又確定申告がやってくる
確定申告ネロ
お前の書類
お前の領収書
お前の計算機が
今はっきりと僕の前によみがえる
だいたいは慣れているものの
今年はどう違うのか
なにがかわったか
説明をよく見ておかないと
以前のように大間違いしかねない
いらいら
いらいら
税金はニッポンくらぶ会費
国家サービス費
ってことだろうと思うことにしているが
こんな申告にかかる時間と手間ひま
どうやって償ってくれるのと思う
あほらし
あほらし
どうせこちらの微々たる収入高を把握してるんなら
そっちで計算して持って来いっての


日本の報道自由度は世界で五十一位だというから
隠微に報道管制がしかれてるんだろな
と思うものの
報道屋さんたち
ひょっとして
みなさんお疲れェ
こんなの見聞きしたらもっと疲れちゃうじゃん系情報はカットして
みなさんのお役に立ちますねェ
とサービスしてくれてるのかもしれない
おもいやりの国 
にっぽん
ありがとうございます
見たり聞いたり
したって
どうにもならないものね
たしかに
ボカスカ
ボカスカ
一五一平方キロのなかに一五〇万人が密集しているガザ市に
イスラエルが爆弾ロケット落としまくって
ナチスにされた虐殺のウサを晴らしまくったニュースなんて
見たり聞いたり
したって
しょうがない
ま、MがハードSになるってのは
よくある話さ
なんてオチャラカして


ガザ市は東京に例えると
江東区+目黒区+品川区+世田谷区の半分+杉並区+練馬区の半分+板橋区+北区ぐらいの広さだそうだが(P-navi infoのビーさんのブログ参照→
ようするにこれは
養殖池のなかでハッパをしかけて
魚を取るようなもの
ナチスだって
アウシュビッツやダッハウやトレブリンカをまるごと空爆はしなかった
フーシェはやったな
フランス革命の時
数百人を縛ってそこに砲弾を打ち込んで河に流すという処理法
あれに学んだってわけか
勤勉、勤勉
たいへんよくできました


見たり聞いたり
したって
しょうがない
たしかに
ガザからのこんな写真だって
トロントのユダヤ人女性たちが
まさにユダヤ人女性として
パレスチナに自由を!と自分たちは訴えると表明している姿だって
見たり聞いたり
したって
しょうがない
イスラエルの大都市テルアビブで
ほかならぬユダヤ市民たちが
自分たちの国の戦争の愚かさを批判し
一万人を超える反戦デモをしたことだって
見たり聞いたり
したって
しょうがない
世界にむけてインターネットで配信され続ける
キーボードと
カメラしか持たない人びとからの報告を
見続け
読み続けたって
しょうがない
これらの報告の
ひとつ
ひとつを
一日に数十もスクラップしながら
書かれていることを
まるで詩のように
分かち書きしてみたって
しょうがない
しょうがないんだけど
声は来る
これらの声………


………爆撃の場所
死体の山
まだ生きている人いますか
何人?
手をあげてください
ちゃんと手を上げる人
頭をもたげる人
最後の力をふりしぼって
でも
まもなく死んでしまう
全身が焼けただれて死ぬなんて
思わなかったでしょ
手足を失って
大瓶のコカコーラ
いくつもこぼしたみたいに
ガイアの肌の上に
血をまきながら
まだしばらく意識があるなんて
驚きでしょ
はみ出した腸を
垂れ下がらせている人よ
そんな大穴が開くと
お腹の中って
スウスウするものかな
みんな血の海に転がって
赤の広場
盛大なトマト投げ祭りの
巨大な会場みたい………


………まさか大学に
ミサイルは撃ち込まないよね
残念
はずれ
バスなんて
空爆中に待ってちゃだめだってのに
大勢で列つくって
なんで
バスなんて待ってんだ
地獄行きのバス
イスラエル空軍パイロットは思った
こいつぁ打ち込んでやらないと
お仕置きしてやらないと
ボタンひと押し
スマートなお仕置き
スマートって
おれ
好きなんだよな
ほうら
七人がスマートに吹っ飛んだ
四人は学生
三人は大学近くの子
なんだかマザーグース
レイエス家の少年たちだってさ
とても仲のいい三人
三人いっしょに生きてきて
三人いっしょにおさらばだ
三人いっしょにおとむらい………


………さあさ、こっちは
下校途中
高校生のふたり姉妹
空爆隊にようやくに
入れたばかりの光輝ある
イスラエル兵の俺さまとしちゃ
逃しはできない練習標的
ボタンひとつで
もらさず殺す
それっ
やったね!
あたり
帰ったら
恋人にも誇れるぜ
高校生の妹にも
おんなじ歳のをヤッてきたと
鼻高々でいばれるぜ………


………学校から帰る途中
こんなそんなで
おおぜいの
子どもは死者の仲間入り
とんとんともだち
みんなで九人
一っちゃん
二ろくん
三ぶちゃん
四ゲ坊
五ろちゃん
六くんぼ
七なちん
八ッちゃんこに
九ゅうどんどん
どんどん
どんどこ
ばらばらに
されるために
子どもはあるって
児童憲章に書いてなかった?
ヘブライ語版には
あるんだけどね
まあとにかくも
生まれ落ちた
民族や場所が悪かった
ガザに住んでりゃ
テロリスト
あんなかわいい顔して
字も読めない小さな子でも
ちっちゃいのも
でっかいのも
駆除しなければと
オルメルトも
バラクも
リブニも
がんばるがんばる………


………最初の空爆から三〇分ほどたって
通りの少し手前
警備隊司令本部の前を通りかかったんです
あたしたち
帰宅の途中でした
そうしたら
司令本部にミサイル
あんまり急で
驚く間もなかったわ
バラバラになっちゃって
どれがあたしだか
わかんなくなっちゃった
通りのはしから
はしまで
腕も
脚も
あたまも
腸も
腰も
独立宣言しちゃって
散らばっていった
靴をはいている足
はいていない足
どれがあたしので
どれが友だちのか
わかんなくなっちゃった
でも
わかんなくってもいいの
いっしょに
お墓にいれてください
なかよしだったし
もっと
なかよしになれるし………


………病院の廊下というより
屠畜場でした
床は血の海
おおげさですか
たしかに
数十センチも
血がたまっているわけじゃないですからね
流れちゃいますから
せいぜい
数センチの深さですが
そんな血だまりのなか
負傷者は壁にもたせかけられたり
死んだ人ととなりあわせで
床に寝かされたり
もげた手や足の先から
どんどんと鮮血を
血の海に補っていました………


見たり聞いたり
したって
しょうがない
たしかに
美しかった今朝の
あさやけ
そぼ降る雨の
しずくをとどめる薔薇の
わざわざ
きれいなカードに
ていねいな文字で書いてきてくれた
礼状
ゆうぐれ空に
大きく
おおきく
うつりかわる色の
あの雲
この雲


見たり聞いたり
したって
しょうがない
たしかに
開けているだけで
目に入る
地球のけしきの
すべて
鏡にうつる
一回きりの生の
きょうだけの
今だけの
こころをよぎる
失われていったものの
たくさんの残像
ふと開く
白秋の童謡
みんな
みんな
やさしかったよ
という
歌詞
からたちの花


みんな
みんな
やさしかったよ
と言えずに
死んでいった人たちに
小声で
からたちの花を
つぶやく
ちょっと鼻歌してみる
行ったこともない
パレスチナ
からたちの花の季節には
白い
白い
花が咲いたよと
つぶやきながら
鼻歌しながら
ことしから
あなたたちに
捧げよう
からたちの花


見たり聞いたり
したって
しょうがない
そんな
ことばかりの
地球で
宇宙で
こころや
意識のひろがりの
ぼんやりしたなかで
あまったるい詩を読み
詩みたいな言葉を
へたくそに並べ
ぼーっと生きている
あるかなしかの
ぼくにできること
白い
白い
からたちの花を捧げながら
つぶやくこと
ちょっと鼻歌してみること
白秋さんの
書いたそのままに
そのままに
借りちゃって


からたちの
そばで泣いたよ

みんな
みんな
やさしかったよ