2011年5月22日日曜日

ホテルという比喩 あるいは 無限とのつきあいかた



この世は慣れないホテル
宛がわれたルームだけには
なんとか慣れたけど
廊下に一歩出ただけで
なんだかビクビク

どこでだれに
なにを見られているか
どんなふうに見られるか
心配そんなに
することはないんだけど
しちゃう心配
あわれあわれ
オノボリサンな魂よ

慣れないホテルに
ちょっと
ちょこっと
慣れるがための
それだけの
この世の時間でした
慣れたころには
発つのだよね また
べつのどこかのホテルで
ゼロから慣れ直し
投宿先を何十もかえれば
いつかは
最初から余裕の旅人
なるかな
なれるかな

詩としては
(平易を宗とする詩のばあいは)
ここで
やめたほうがいい

けれど
どこから来たのか
故郷はどこか
思ってない
なんてことない
と言ってはおきたい

でもさ
むずかしいわけさ これは
故郷でもないところを
ごたいそうに
称揚しちゃったりして
大がかりに道に迷う
ってなことに
なる
なる
なる

宛がわれたルームに留まって
うす汚れた壁や
意外ときれいな窓なんかを
眺めていたほうが
迷わないね

まずは
ルームを見まわして
壁から調度まで見つくして
驚いちゃうことだ
大宇宙のさなか
こんなちっぽけなところに
わざわざ
じぶんは籠っている
無限の大宇宙のさなか
たったこれっぽっち
ここにしか
じぶんの場はないんだってさ
と確かめて
まいったね こりゃ
まいったね こりゃ
なんて
ひとりごとしてみる

真理とか
法則とか
いろいろ言う人たちがいたけれどね
驚くなかれ
《まいったね こりゃ》
以外の出発点は
ないんだぜ
大宇宙のさなかには
無限との
つきあいかたには

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