庭木の奥の
玄関の暗いオレンジ燈が
菫の蕾を
照らしている
(だあれもいないから、ね…)
まだ冷える
春先の晩
季節のからだが
温かみを持ってきている
(だあれもいないから、ね…)
仄暗さ、甘さ、
ふいに
もう、さびしくない
晩となり
つっかけを穿いたまま
思っていた
晩春への、
たぶん、…キス
(だあれもいないから、ね…)
初夏への、キス、…
も
いちばん
さわやかな香りの
氷菓
今年はさがすよ
(だあれもいないから、ね…)
照らされている
菫の蕾
冷たいなか
冷たいままで
準備されていく
いくつかの
色
やがて、
…とりどりの色
…、命
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