2012年12月15日土曜日

ちんぴら男、飯田橋で降りる




混んでいた電車だが
席がひとつ空いていたので座ると
左足をひろげて
こちらに投げ出していた
となりの男が

―このやろう、
足が痛えんだよ、
そこに座るんじゃねえ!

と言って来たので

―なに言ってんだ、
このやろう、
おまえの電車か、これは?
ひとりで二人分とってんじゃねえ、
このやろう!
このクソ電車の席は
こんなふうに
ケチくさく
小さく作りやがってんだ
たげえに(互いに)
ちったぁ我慢して
しずかに坐ってようじゃねえか

と返したら
しずかになった

それでも
にんにんにんにんにんにん
左足を
こちらに押しつけてきやがって
地味な抵抗を続けてきたが
そのぐらいは
どうでもいいので
放っておいたら
飯田橋で降りやがってんの
でっかいリュックを
まわりの人たちに
ぼん
ぼん
ぶつけながら背負い
左足をひきずりながら
出口までいきやがってんの

角刈りした髪を
茶に染めて
わきには剃り入れて
センスのない
茶のうすいグラサンして
じゃらじゃら
金属くさりを首にまわして
殷の時代の
青銅器の怪物みたいな目しくさって
もう若くもないのに
しょぼしょぼ
よろよろ
いきがってんの

アーメン

まぁ、
せいぜい
生きのびていけ

がんばって



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