2012年12月4日火曜日

まだ行く

  


東京の電車も
少し込んでくると
滅びの香りが
深く漂うようになった

小金が入ってくる
期待のあったうちは
まだごまかせたが
べったりした虚無が
もう誰の喉元でも
なまぐさい口を
開いている

この先
いいことはもう
なにもないと
わかってしまって
初老の心や
老い募った心が
血色の悪い
乾いた肌をして
しがみついている
吊革

かなりの不快にも
辛苦し黙り続け
行く先といっては
もう
衰え果てた鶏のように
生きたまま
ミンチにされてしまう
粉砕機の穴のなか

それなのに
ろくに声も立てず
まだ行くのだ
どこまでも
どこまでも
―といっても
もう終わりはそこだが
まだ行く
まだ行く
まだまだ他人に
悪すぎる人と
思われないようにと
じゃまな奴と
嫌われないようにと
生物としての悲鳴さえ
押し殺しながら
まだ行く
まだ行く


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