2013年1月27日日曜日

きびしいドキュメンタリードラマ





ある国の兵士の
ドキュメンタリードラマだ
一日の仕事が終わって
兵舎から出てきたところから
はじまる

屋台のならぶところで
彼はなにか手に取り
買おうとして
ちょっと不器用に
どしん!と
レジ台に置いてしまう
店のおばさんが
乱暴にしないでよ
どしん!と音したでしょ
まったく
乱暴なんだから
そう言うと
まわりの女たちも
わあわあ言う

兵士は口を歪めて
なにごとか
抗弁したがっていたが
けっきょく
なにも言わないで
だまって金を払って
離れていく

まったく
乱暴な兵隊だよ
ああいう奴には
おあつらえむきだよ
軍隊が!
女たちは言う

そのあと
ナレーションが入る

―この兵士の最近の仕事は
国内の反乱分子の処刑
今日も午前に
三人の青年を処刑した
ひとりは未成年の女子だった

そうして

この兵士が
女子の背後から
後頭部に銃をむける写真と
処刑後
頭が西瓜のように
ぱっくり開き
脳が飛び散った
女子の死骸の写真

…きびしい
ドキュメンタリードラマだ
いいものを見たと思った

真実か
真実に近いものは
鋼鉄のような手触り
まずは
その手触りから始める
温かい毛糸の暖色のカバーはいらない
かわいいキャラクターの付いた
ウレタンの被いもいらない



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