2014年1月21日火曜日

歯槽膿漏詩

  

もの好きな若者から
どんな詩を書くべきでしょう
と聞かれたの
で…

そうね
読まされる側から言えば
まずは短いものに
限るよね

二〇行以内がいいよね
六行から八行ぐらいだと
けっこう読まれる
二〇行を出ると
もうだめだね
超えちゃう場合は
各行の字数を減らすんだよ *

読んでもらいたいのが
だれかにもよるが
きみみたいに
詩なんて書いたり
読んでる暇が
ないんだからね
みんな
だから短さはいのち
字数の少なさは
いのち

きみの考えも
感想も
感性も
美意識も
盛り込まないほうが
いいね

きみのことなんて
だれも知りたくないし
どうでもいいんだよ
みんな
じぶんの意識内のごちゃごちゃで
せいいっぱい
じぶんの身体がどうした
こうした
人間関係がああだこうだ
それで
せいいっぱい

歳をとってきても
人生論しちゃ
だめだよ
言いたいことがあっても
きみの人生から紡ぎ出したものは
ほかの人生にぶつけると
化学反応を起こして
反発しがち

詩にも
オヤジ臭オババ臭が出るしね
老臭も病臭もね
古典やあれこれの
文化的知識を盛られても
古い廃れた喫茶店の中に
連れ込まれてきたようになるしね
民俗学ふうの細々を盛られちゃ
つまらなさの極み
民俗学の本そのものは
あんなにおもしろいのにね

老人のチョッキや
ジャケットに染みた
油っぽい臭いに
煙草臭さや
アルコール臭や
安い中華屋の臭いまで
混ざっちゃうとね
だれでも
遠ざかりたくなるよね
それだけなら
まだいいが
歯槽膿漏の臭いまで混じると
もうダメだね

歯槽膿漏詩
ずいぶん多いんだよ
ぼくが今書き終えようとする
これみたいにね




*アステリスクを付けたこの部分の後で、以下の数連を削除した。どこかに入れようかどうか検討中だが、とりあえずここに注記しておく。結局は入れないかもしれないが。

「繊細な内容を伝えようなんて
そんな時代は終わった
なにかを象徴する?
そんなまだるっこしいこと…
ロマンとかなんとか?
ラブホテルじゃないんだよ
ショッキングなことも
満ち満ちている
きみの生活や考えにも
だれも興味はない
きみのお仲間にもね
藤村光太郎中也賢治道造
戦後詩現代詩ダダ詩
みんな廃物です
臆病サヨクぐらいだろう
そこらへんに縋るのは
本当に逮捕されるような
ところまで行けずに
核家族をうじうじ
守っているような

内容をひどくひどく
単純化するのもいい
きみが思っていること?
感じていること?
そんなこと
どうでもいい
むしろ無視したほうがいい
言葉を並べること
それだけが大事なんだから
世間の風潮に流れるのもいい
反抗を気取るのもいい
なにか細かいものに
通じているふりをしてもいい
逆にマッタク知リマセン
というふりをしてもいい
言葉を並べること
それだけが大事なんだから
まるで政治家のように
選挙のビラや演説のように
校長先生の朝礼の言葉
首相のあらゆる演説
テレビが編集する街の人たちの言葉
新聞の社説や読者投稿
なによりかにより年賀状の文句
フェイスブックの企業広告
ああそうしてたくさんの
サイトサイトサイトサイト」
                                  
   





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