2015年2月12日木曜日

いただきます



   
いただきます
と食前に言うのは
にっぽんの美徳

そう言われるのを聞いてきた

しかし
こんな話を
ある霊能者から聞いた
いただきます
と食前に言ってはいけない
絶対にやめてくださいと

いただきます
と言って食べる人たちの
からだに
こころに
たましいに
食物に含まれるすべて
食物が帯びているすべてが
染み込んでいく
それがよく見えるという
栄養も染み込むが
食材や料理に付与されたすべての
雰囲気
思い
添加物まで
染み込んでいく

肉ならば
殺される動物たちの感情
切り裂かれる痛み
じぶんを殺す者への報復の念
最期に見た工場内の風景
作業する人間たちの心のようすまでも

野菜ならば
土壌に撒かれた農薬
降ってきた汚染物質
さらには土にこびりついている
古くからの土地の記憶

加工食品なら
ベルトコンベアーに並ぶ
労働者たちのさまざまな思い
経営者への呪詛
彼らがきのう見たテレビ番組の波動
出勤時に経験した
押し合いへしあいの電車の雰囲気も

だから
いただきますと言うのは
もうやめてください
ぜんぶが自分に染み込むのを
許可してしまう
魔の言葉ですから
残念ですが
時代はすっかり変わってしまっています
食物が帯びているすべてを
ぜんぶ取り込んではいけないのです

口のところで
喉や食道で
さらには胃でも
ぜんぶを取り込まないように
微細なナイフや
こまかい毒の粒を除くようにしながら
むしろ
わたしはわたしによいものだけを摂る
害毒のあるもの
余計なものはすみやかに
わたしのからだの力で消滅させる
と思ってください

なるほど
とわたしは思ったが
しかし
この霊能者の言うことに従う必要もない
と考えた

なぜなら
こう聞く前に
わたしはとうの昔から
いただきます
というのを止めていたから
もう何十年も
言ったことはない
思ったこともない
儀礼的に
いただきます
と発語することもあるにはあるが
発語とこころを切り離してしか
言うことはない


(……
(わたしを導く多くのものがいて
(正確にわたしを動かし続けている
(心の動きも
(体調も
(ゆえしれずに襲ってくる疲労や怠惰さえ
(すべてが計算され尽している
(だから
(外部のものはなにも信じる必要がない
(情報を探す必要もない
(要るものはすべて自然に手元に現われ
(聞かされ
(読まされるから
(ソクラテスはむかし
(これをわがダイモンと呼んだ
(わたしは単に勘と呼び
(思いつきと呼び
(なんとなく…と呼ぶ
(これから激変の時が来るにあたり
(わたしの言葉がわずかに伝わる先の人びとには
(同じことをつよくお勧めする
(たゞ最初の勘にのみ従い
(疑いや思考には従わないように
(だれひとり独りで生きてはいない
(多くの見えない導き者によって取り巻かれており
(これからはいっそうのこと
(それらの導き手たちに素直に従うように
(どれほど驚くべきことや
(恐ろしいこと
(悲しいことが襲ってきても
(大宇宙の時空の壮大な罠のなかでは
(すべては過去にして未来
(すべては今
(したがって生きているじぶんはすでに死んでいる
(死をとうに経ているものを損ないうるものはないと
(究極の認識を思い出して乗り越えるように
(……




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