ひとしきり激しい雨に見舞われた朝だったが
それでも冬に入ってから乾ききっていた空気が潤されていくようで
快くもあった 水たまりを避け
足早に進むうちにすぐにズボンの裾は湿り とうに過ぎ去ったはずの
六月頃を思わせた 初夏の雨に降られて濡れそぼった裾の
脚にまとわりつく重さや冷たさが思い出され あれほどには濡れずに
駅まで辿りつければいいがと 歩き続けていく
こういうことだ、生きているというのは――
とふと思ったが
まるですでに死んでいるような 思いではないか
死んで「いる」ではなく
すでに「死」のような
死にゆくのでもなく
死んだのでもなく
動詞「死ぬ」の動きの圏外に
なにものにも侵されずに浮いている
立っている (たぶん濃いブルーの光そのもののように
(可視だが近づきえないもののように
そこへ到るものでもなく成るものでもなく
いつも併行してありながら
いつも絶対の乖離としてある
「死」
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