2013年12月6日金曜日

わあわあ




  

うとうとしているあいだに
何十年も前の
まだみんな若かった友人たちとの
議論やおしゃべりのテーブルに
戻ってしまっていた

あの頃も政治は危機的で
すぐにもこの国は
また戦前のようになってしまうと
ほうぼうで危惧され
時局通がわあわあ言っていた

遅れじとぼくらも
あの新聞この雑誌と熟読し
風呂のあとの火照る体から湯気を出し
深更までスクラップしたり
メモをとったり

そうして
わあわあ言うために
いつもの喫茶店に出かけては
他人の出した見通しを修正したり
あまり知られていない情報を出してみたり

わあわあ、わあわあと
雰囲気だけは残り
けっきょく「ねばならぬ」
「てはならぬ」論は
どうでもよかったようなもの

大挙して「おいしい生活」になだれ
だれもがバブルの狂騒に揺らめくのを
その後ぼくらはつぶさに眺めた
わあわあの後はべつのものが来ると
身にしみて知ったハルキお好みの時代に

わあわあ言うのは人に任せて
いまのぼくはデュシャンに学び直す
世界大戦中
モンテカルロでルーレットに興じ
チェスに没頭していた彼に

なんどか会ったマンディアルグさんも
戦中はモンテカルロにいて
なにをしていたんだか、いなかったんだか
レジシタンスなんぞ
どこ吹く風であったそうな                               




   
   

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