まだ寝ているべきなのに
夜明け前
目覚めてしまって
もうちょっと眠ろうと努めながらも
どんどん冴えてくる時
さまざまな気がかりの底に
浮かび上がってくるのは
いつも
死のこと
死んだらどうなるかというような
子どもの頃の悩みではなく
死んでいく過程での
なんと
たくさんの
不調や憔悴や持ち直しや
ふたたびの衰弱や
「別の医者に聞いてみなきゃ」
「経済的に続くかしら」
「また採血か」
「ベッドの位置は奥の方が」
「支払いは月末?」
「帰路はタクシーのほうが…」
などなどの
無数のくりかえし
そして
その果てにようやく
ひょっこりと獲得される
息の引きとり
何人もの死への道行きを見てくると
もう自分の世話もできなくなる頃
小さな小さなことの積み重ねを
看護師はやってはくれないし
見舞いにたまに来る友人もやってはくれない
そういうものだとわかる
どんなに気を使ってくれる家族がいても
朝から次の朝まで
起きて付きっきりで世話など
一億総活躍の世では
やってくれようもない
人間は一日シャワーを浴びないだけで
すぐに臭くなるというのに
点滴をいつもつけた末期の体は
もう風呂にもシャワーにも入れてもらえない
時どきタオルで拭いてくれても
垢じみた臭いは取れない
自分で顔のまわりや首元の臭いが気になっても
誰も洗ってはくれない
ちょっと顔にオイルを塗りたいと思っても
目ヤニがついてないかどうか気になっても
もう自由に動かせなくなった体では
どうにもならない
まるで
ヘンな時間に目覚めて
すぐには寝直せない
こんな不自由さのように
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