Moët&Chandonを飲んで
少し疲れたのか…
夕食を終えて
わきのソファでうとうとしていると
べつの時代に居た
おなじつくりの部屋に
おなじようにソファがあって
横たわっている場所からは
ふいにインテリアがかわっただけの
まったくおなじ部屋に見える
しかし
左奥の壁には書棚はなく
かわりに大理石の暖炉があって
火があかあかと燃えている
そうして
うとうとしながら
こんな部屋に横たわっているんだな
べつの時代にも
などと思っている
ソファのうしろには
うす暗く部屋のむこうが広がっている
毛足の長い絨毯が敷かれているのを
よく知っている
長く住み親しんだ家の居間だから
すっかり目が覚めて
こちら側へ戻ってくるのには
時間がかかった
こちら側とむこう側のあいだを
ひらひら
行き来しながら
てのひらに
人生がいくつも
小さい玉のように
まるごと乗っているのがわかった
こちら側の生の玉も
そのひとつで
ちょっと見つめながら
それがすっかり球体になって
もう終わり切り
完結しているのがわかった
この玉の中に入り込んで
また続きを見続けなきゃいけないのかと
めんどうに思ったが
まあいいか
どうせもう終わっているんだから
はじめてからすべて終わっていたのだから
などと
へんな理屈を思い
しばらくてのひらの上で
ころころさせてから
雪で覆われた湖の氷の上で
小さく丸く開けた窓に
ひゅっと身を滑らしていくように
玉の中に潜り込んで
…ここに戻り
いま
こんなふうに書いている
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