最近のことだが
どこかで
エリーゼのために
を耳にした時
いやだな
と思い
よくない音楽だったんだな
と結論し
ベートーベンのある面とは
もうつきあうまい
と決めた
あの重さが
もう
要らない
深田晃司監督の「よこがお」という映画*では
老いて動けなくなった女性画家が
ゴルトベルク変奏曲ばかり
介護士や家族に掛けさせていたが
室内では
それがもう
まったく美しく聞こえない
ある時
老女性画家は
ゴルトベルクにはもう飽きた
と介護士に言う
なにも掛かっていない室内のほうが
たしかに
安らいでいる
つねに呼吸器に雑音の雑じるようになっている
老女性画家の
ぜいぜい言う呼吸の音のほうが
いいかもしれない
さほどよくないスピーカーから流れる
CDの
ゴルトベルクの音よりも
ほかの演奏が手に入ったならば
とも
思わないではないが
手に入らない宿命もある
手に入っても
いいと感じられない感性のまゝ
時間の滝壺にむかっていく
運命もある
*深田晃司監督の「よこがお」(2019)https:// www.youtube.com/watch?v= 2rmNcfefcaM
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