仏陀が後継ぎを決めるとき
コンパラゲという花を手に持って
弟子たちに見せた
摩訶迦葉だけがそれに微笑んだので
仏陀は彼に後を委ねた
いわゆる拈華微笑の言い伝えで
この言葉はそのまま
以心伝心の意味でも使われる
言葉や論理を仲立ちにせず
悟った者どうしで共鳴し
感応しあうことを指す
しかし仏陀にしても
コンパラゲの花を見せるという
表象を用いる手を使った
そうして「コンパラゲの花」という
デノテーションではなく
この場合に仏陀が込めたコノテーションを
つかめる者がいるかどうか
試したわけで
摩訶迦葉だけが
それを受け止めたことになる
達磨の場合
なにものをも介さずに
心を直接示すということで
直指人心というが
こちらのほうが
記号の意味作用の森に入り込まず
すっきりしている
覚者の境域に遊ぶ者が
言葉や論理や表象にかまけていては
話にならない
そういったものは
人界で秀才をてらう者たちに
一生を無駄にするにふさわしい絶好の玩具として
くれてやっておけばよい
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