2015年7月22日水曜日

偶然シャネルに終わった日




    « Ce que je porte la nuit ?
      Mais ... N°5 de Chanel, bien sûr ! »
    Marilyn Monroe




遅く帰ると妻は寝ていたが
風呂に湯を張って
シャネル5番の入浴剤を入れてあるから入って
とラインが来ていた

…こういう人が近くにいて
人生のこんな時期を
いま生きて過ぎつつある…

そう思いながら
しばらく湯に浸かる

違う人たちが
近くにいた時期もあれば
近くに来ようとして
近くに行こうとして
ついに来れなかった人たち
ついに行けなかった人たちと
繁く関わった
ながい
長い時期もあった

なにもかも
誰も彼も過ぎ去って行くが
どの頃のわたしが
いっそう本当のわたしなのだろう

…あゝ
そういえば
今朝はシャネルのアンテウスを付けて
出かけたのだ
と思い出す
夏場に入って使うことの多い
ロクシタンのヴァーベナの香りが
あまりに早く
飛び去り過ぎるので
朝から猛暑だった今日
ひさしぶりに
しっかりした香りのシャネルを選んだ
線香臭いが
それでもシャネルの中では軽めの
アンテウスを
真夏の日のために選んだ

シャネルに始まって
偶然シャネルに終わった日
むかしの
永遠の誰かのように
シャネル5番の香りを漂わせながら
寝室に向かう




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