あまりにうつろいやすいこの世にあって、
私はゆっくりと生きようと心に決めた。
まるで長い一生が約束されているかのように、
私は自分の務めを果たしたい。
ジュリアン・グリーン 『日記』
ハロゥインの夜
渋谷には行かなくて
どこかへいってしまったコードの替わりを買うために
小田急線から降りたついで
新宿に寄る
買い物は
騒々しい電器店のなか
あちこちの売場に行かされたけれど
意外と値がはらずに
まぁ
無事終了
渋谷は
にわか仕込みのバケモノたちで
ごったがえして
火事まで起こったらしいと
スマートニュースが伝えてきているが
新宿西口は暗く
暗く
暗く
ハロウィンの仮装などまったくしていない
疲れた背広姿たち
お腹の丸く出たアジア人たち
重いTUMIで肩のあたりが歪んだビジネスマンたち
べつに否定的に書く必要もないOLたち
うすら寒いのにTシャツに短パンの白人たち
仕事なんかしていなさそうな蓬髪の若者たち
なんかが
闇のなかを
ずいぶんゆっくりと
うろうろ
うろうろ
こちらのほうが
よほど
ユーレイじみているんじゃないか?……
そう思いながら
無糖のタリーズ缶コーヒーを買って
他の駅で買った
セブンイレブンの菓子パン(あまりうまくなかった…)の残りを
のんびり齧りながら
ヨドバシカメラの前のポケモン広場で
スマホにチコチコ
スマホでチコチコ
やり続ける人びとを見ている
こちらのほうが
よほど
ユーレイじみているんじゃないか?……
この
異様な光景
夜の新宿西口の人びとの
この
浮遊霊感覚
いいことはないな、これは……
と
つくづく思わされる
夜の
新宿西口の
人びとの
影そのもののうごめき
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